ゼラの戦い

ゼラの戦い：カエサルの電撃的勝利

ゼラの戦いは、紀元前47年にガイウス・ユリウス・カエサル率いる共和政ローマ軍と、ファルナケス2世率いるポントス王国軍が、ゼラ（現在のトルコ・ジレ）近郊で戦った戦いです。

背景

ファルナケス2世は、グナエウス・ポンペイウス率いるローマ軍に抵抗した父ミトリダテス6世を自害に追い込み、紀元前63年にポントス王となりました。彼はボスポロスおよびキンメリア（現在のクリミア地方）の属王として認められました。しかし、ポンペイウスがカエサルとの内戦に突入すると、ファルナケス2世は父の時代の領土回復を目指し、小アジアで挙兵しました。

紀元前48年12月、ファルナケス2世は小アジアに駐屯していたカエサル派のグナエウス・ドミティウス・カルウィヌスが指揮するローマ軍を破り、コルキス、アルメニア、カッパドキアへと勢力を拡大しました。これに対し、ナイルの戦いで勝利したカエサルは、アレクサンドリアからシリアを経て小アジアへと進軍しました。

戦力

カエサル率いるローマ軍は、第6軍団、第22軍団、第36軍団などから構成されていました。一方、ポントス軍は約20,000人で、領内から徴兵された歩兵部隊が主体で、他に騎兵や傭兵部隊がいました。

戦闘の経過

紀元前47年8月、両軍はゼラで対峙しました。ローマ軍が丘の上に陣を構えたため、ポントス軍は丘を駆け上がって攻撃を仕掛けましたが、ローマ軍はこれを凌ぎました。そして、ポントス軍の勢いが衰えたのを見て、ローマ軍は丘を駆け下りて反撃し、約4時間の戦いでポントス軍を破りました。

この勝利の報告として、カエサルは元老院に「Veni, Vidi, Vici（来た、見た、勝った）」という有名な言葉を送りました。

戦後

ファルナケス2世はボスポロスへ逃れて再起を図りましたが、内部の裏切りによって殺害されました。ポントス王国の領土はローマによって分割され、一部はミトリダテス6世の庶子であるミトリダテスに与えられました。また、ファルナケス2世が築いた要塞は全てローマ軍によって破壊されました。

スエトニウスによれば、カエサルは後に「このような弱い敵に対する勝利で、ポンペイウスは大きな名声を得ることができて幸運だった」と回想したと伝えられています。

参考文献

ジョージ・C・コーン著、鈴木主税・浅岡政子訳『世界戦争事典』河出書房新社
プルタルコス著、村川堅太郎編『プルタルコス英雄伝〈下〉』ちくま学芸文庫
* スエトニウス著、國原吉之助訳『ローマ皇帝伝 上』岩波文庫

もう一度検索