グラヤノトキシン

グラヤノトキシンは、ツツジ科植物に含まれる有毒な成分の総称であり、特にグラヤノトキシンⅠ、Ⅱ、Ⅲの3種類が知られています。グラヤノトキシンⅠは、アセボトキシン、ロードトキシン、アンドロメドトキシンとも呼ばれます。

分布と由来

グラヤノトキシンは、レンゲツツジ、アセビ、ネジキなど、ツツジ科の植物の全草に含まれています。名前の由来となったのは、日本産のハナヒリノキ（Leucothoe grayana）です。この植物から発見され、グラヤノトキシンと命名されました。

作用機序

グラヤノトキシンは、細胞膜上のナトリウムイオンチャネルに結合し、その機能を阻害することで毒性を発揮します。通常、ナトリウムイオンチャネルは細胞膜の電位変化に応じて開閉し、細胞内外のイオンバランスを調整していますが、グラヤノトキシンが結合すると、チャネルが開きっぱなしの状態になります。その結果、細胞膜の興奮と脱分極が継続し、過剰なカルシウムイオンが細胞内に流入します。このイオンバランスの乱れが、様々な中毒症状を引き起こす原因となります。

具体的には、骨格筋や心筋の収縮が異常に強まり、期外収縮などの不整脈を引き起こす可能性があります。また、迷走神経を刺激した後に麻痺させる作用も持っており、心血管系や呼吸器系にも影響を及ぼします。

蜂蜜への混入と歴史

ホツツジなどの蜜に含まれるグラヤノトキシンが、蜂蜜に混入することがあります。グラヤノトキシンを含む蜂蜜を摂取すると、中毒症状が現れることがあります。この問題は古くから知られており、古代ギリシャ・ローマ時代には、大プリニウス、ストラボン、クセノフォンらが、ツツジ属植物の蜜に由来する蜂蜜による中毒について記録を残しています。彼らの記録は、グラヤノトキシンによる中毒が、歴史的に繰り返されてきた問題であることを示しています。

家畜への影響

グラヤノトキシンを含む植物を家畜が摂取すると、中毒死に至るケースがあります。特に、放牧されている家畜が誤ってツツジ科植物を食べてしまう事故が報告されています。家畜の種類や摂取量によって症状の程度は異なりますが、神経症状や心不全などを引き起こし、最悪の場合には死亡します。そのため、牧草地にツツジ科植物が生育している場合は、適切な管理が必要です。

外部リンク

* アセビ・ネジキ・レンゲツツジ・ハナヒリノキ

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