グランピング

「グランピング（Glamping）」は、英語の「グラマラス（glamorous、魅惑的な、豪華な）」と「キャンピング（camping、キャンプ）」を組み合わせた言葉として生まれました。これは、単なるテントでの宿泊とは異なり、自然豊かなアウトドア環境にいながら、まるでホテルに滞在しているかのような快適さや上質なサービス、さらには豪華な食事などを享受できる、新しい形のキャンプスタイルを指します。

歴史的背景と発展

グランピングの概念の源流は、古くは12世紀頃にモンゴル帝国で用いられていた移動式住居である円形のテント「ゲル」に求められることがあります。その後、17世紀のヨーロッパ貴族の間では、豪華な装飾を施したテントを設営し、野外で贅沢な生活を送るスタイルが見られました。さらに、19世紀後半から20世紀にかけては、アフリカなどの植民地におけるサファリにおいて、長期滞在でも快適に過ごせるように改良されたテントスタイルが発展しました。

日本におけるグランピングの本格的な広がりは、比較的最近のことです。2015年10月には、日本初のグランピングリゾートとされる「星のや富士」が開業し、注目を集めました。以降、その人気は高まり、大手アウトドアメーカーであるスノーピークが2019年7月に長野県白馬村に最上級のグランピング施設を開業したり、2022年4月には新潟県三条市に温浴施設を中心とした複合リゾート型の施設をオープンするなど、多様な形態の施設が登場しています。

市場規模と多様な形態

国内のグランピング市場は現在、急速に拡大しています。グランピング専用施設に加え、コテージやトレーラーハウス、キャビンなどを備えた施設も含めると、全国には1,000施設以上が存在すると言われています。これらの施設における年間売上を合算すると、市場規模は合計で約650億円から700億円程度に上ると推計されており、今後も成長が見込まれる分野です。

グランピング施設の形態も多様化しています。代表的なものとしては、円形やドーム型のテントを用いたスタイルがあり、その他にも、組み立て式のインスタントハウス、移動可能なトレーラーハウスや住箱、しっかりとした構造を持つコテージやヴィラ、さらには電力などを外部供給に依存しないオフグリット型の居住モジュールなど、様々な宿泊ユニットが導入されています。

魅力的な立地と体験

グランピング施設は、その立地を最大限に活かした多様な体験を提供しています。国立公園や国定公園、都道府県立自然公園といった豊かな自然環境の中に立地することが多く、その他にも、ジオパークやエコパーク、牧場、海水浴場、ゴルフ場、スキー場、河川公園、ダム公園、棚田、離島など、特色ある様々な場所に展開しています。特に、空気が澄んでいて標高が高い場所など、美しい星空を観賞できる立地の施設は人気があります。

提供されるアクティビティも、その立地に根ざしたものが中心です。トレッキングやウォーキング、サイクリングといったアウトドアスポーツ、釣り、自然散策、星空観賞など、多様な体験が可能です。また、既存の宿泊施設や温浴施設、レジャー施設に併設される形で展開するものと、豊かな自然環境やアクティビティ自体を集客の軸とする単独型の施設があります。これらの施設では、単に快適に過ごすだけでなく、その場所ならではの非日常的な体験コンテンツが提供される点が大きな魅力となっています。

広がる産業と今後の展望

グランピングの人気の高まりに伴い、多数の企業や団体がこの分野に参入しています。アウトドアメーカーやリゾート運営会社、地域開発に関わる組織など、多様なプレイヤーが存在します。また、グランピングをテーマにした書籍や情報サイトなども数多く出版・運営されており、情報収集や予約が容易になっています。

グランピングは、単なるレジャーの形態にとどまらず、地方創生の推進やSDGs（持続可能な開発目標）への貢献といった側面でも注目されています。自然環境との共生を意識した施設運営や、地域資源を活かした体験提供は、地域の活性化につながる可能性があります。今後も、アウトドアを手軽に、かつ快適に楽しみたいというニーズに応える形で、市場の拡大とともに、施設の形態やサービス内容の多様化が進んでいくと考えられます。

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