グリセリン脂肪酸エステル

グリセリン脂肪酸エステルとは

グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン（グリセロール）と脂肪酸がエステル結合した化合物の総称です。グリセリドまたはアシルグリセロールとも呼ばれます。グリセリンは3つのヒドロキシル基を持つため、1つ、2つ、または3つの脂肪酸と結合して、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールを形成します。

グリセリン脂肪酸エステルの種類

グリセリン脂肪酸エステルの種類は、結合する脂肪酸の種類や数によって多岐にわたります。

モノグリセリド：グリセリンに1つの脂肪酸が結合したもの
ジグリセリド：グリセリンに2つの脂肪酸が結合したもの
トリアシルグリセロール：グリセリンに3つの脂肪酸が結合したもの（油脂の主成分）

日本の食品衛生法では、モノグリセリド誘導体やポリグリセリン脂肪酸エステルもグリセリン脂肪酸エステルとして扱われます。

グリセリン脂肪酸エステルの歴史

天然油脂にグリセリン脂肪酸エステルが含まれることは古くから知られていましたが、1854年にマルセラン・ベルテロが脂肪酸とグリセリンからの合成に成功しました。1930年頃からマーガリンへの添加が始まり、日本での製造・消費は1950年代からです。

グリセリン脂肪酸エステルの製造方法

モノグリセリドの主な合成法は、グリセリンと脂肪酸のエステル化、または油脂とグリセリンのエステル転移（グリセロリシス）です。工業的には、天然油脂のグリセロリシス反応が高温・高圧下で行われ、生成物を蒸留して精製します。

グリセリン脂肪酸エステルの用途

グリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤、分散剤、安定剤、品質改良剤として、食品、化粧品、医薬品など幅広い分野で使用されています。

食品：マーガリン、パン、ケーキ、アイスクリーム、ホイップクリーム、チョコレート、キャンディ、キャラメルなどの品質改良、乳化安定
化粧品：クリーム、乳液、口紅などの乳化、分散、安定化
医薬品：軟膏、クリーム、坐薬などの乳化、分散、安定化

食品添加物としてのグリセリン脂肪酸エステル

モノアシルグリセロールとジアシルグリセロールは、食品添加物として乳化剤として利用されます。トリアシルグリセロールは乳化剤としての性質は持ちません。

モノグリセリド誘導体

モノグリセリド誘導体は、モノグリセリドのヒドロキシル基に有機酸を結合させたもので、酢酸モノグリセリド（AMG）、クエン酸モノグリセリド（CMG）、コハク酸モノグリセリド（SMG）、ジアセチル酒石酸モノグリセリド（TMG）、乳酸モノグリセリド（LMG）などがあります。それぞれ用途が異なり、食品の品質改良などに利用されます。

ポリグリセリン脂肪酸エステル

ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを重合させたポリグリセリンに脂肪酸を結合させたものです。耐酸性・耐塩性に優れ、O/W、W/O型乳化、粉末分散、結晶調整、抗菌などの効果があります。

まとめ

グリセリン脂肪酸エステルは、様々な種類と特性を持ち、食品、化粧品、医薬品など幅広い分野で重要な役割を果たしています。用途に応じて適切な種類を選択することで、製品の品質向上に貢献します。

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