グリッサンド

グリッサンド奏法

概要

グリッサンド（伊: glissando）とは、一つの音から別の音へ、明確な間隔を持たずにスムーズに音高を移動させる演奏技法です。この奏法によって、音楽に流れるような表現を加えることができます。一般に、この技法を用いる音を「グリッサンド音」とも呼び、滑らかに音を奏でる特徴から「滑奏音」としても知られています。

グリッサンドとポルタメント

グリッサンドは特に旋律の表現において使用され、類似の手法にポルタメントがあります。ただし、ポルタメントは次の音へ急速に移動するのに対し、グリッサンドは前の音からゆっくりとした時間をかけ、ほぼ一定のテンポで音を上下させます。この違いによって、グリッサンドは音楽に柔らかさや連続性を与える効果を持っています。

記譜法

グリッサンドを記譜する方法はいくつかあり、演奏を指示するために重要です。主な記譜方法は以下の通りです。

1. 開始音と到達音を直線または波線で繋ぐ。
2. 到達音がない場合は、演奏者に上下の動きを示す。
3. グリッサンドを示す指示「gliss.」を加える。
4. 実際の音を全て書き連ね、スラーで繋いでから「gliss.」を記す。

各楽器における奏法

多くの楽器でグリッサンドは用いられていますが、その奏法は楽器ごとに異なります。

鍵盤楽器

ピアノやチェレスタでは、鍵盤上を爪で滑走させることで音を奏でることができます。この場合、間の半音は演奏せず、特に黒鍵または白鍵のいずれか、または両方を用いることが一般的です。

弦楽器

ヴァイオリンや胡弓、トロンボーンなどのフレットのない弦楽器では、半音の間を滑らかに移動することが可能です。特に、ヴァイオリンには「ハーモニクス・グリッサンド」という奏法があり、指を弦に軽く触れさせながら上下に滑らせて音を変化させます。

木管・金管楽器

木管楽器では、音の高さを変化させるためにアンブシュアを調整することでグリッサンドを表現します。特にクラリネットは、完全なグリッサンドを可能にするため、指の滑脱奏法が効果的です。一方、バルブ付き金管楽器では、管の長さを変えることで音の移行を実現します。

打楽器

ティンパニなどの打楽器でもペダルの機構を使ってグリッサンドを表現します。また、コンガや太鼓のような楽器では、特定の手法で音高さの変化を示すことができます。

グリッサンドが使用された作品

グリッサンドは多くの有名な曲に使用されており、以下はその例です。

• - 『ラプソディ・イン・ブルー』（ガーシュウィン）：冒頭のクラリネットの上昇グリッサンド
• - 『幻想交響曲』（ベルリオーズ）：第5楽章のフルートとオーボエによる下降グリッサンド
• - 『交響曲』（矢代秋雄）：第4楽章、トロンボーンの下降グリッサンド
• - 『管弦楽のための協奏曲』（バルトーク・ベーラ）：ティンパニによるペダルを使ったグリッサンド

このように、グリッサンドはさまざまな楽器やスタイルで実践され、音楽の表現を広げる重要な要素となっています。

もう一度検索