グリーゼ486b

グリーゼ486b は、地球からおとめ座の方向におよそ26光年離れた位置に存在する太陽系外惑星です。この惑星は、赤色矮星として知られる恒星グリーゼ486の周囲を回っています。

発見

その存在は、2021年に国際的な研究チームによって明らかにされました。このチームには、ドイツのマックス・プランク天文学研究所や日本の東京大学大学院の研究者らが参加しており、科学雑誌サイエンス誌上でその発見を報告しています。惑星の発見は、主星であるグリーゼ486の前を惑星が通過する際に発生する、主星の明るさの一時的な減少（トランジット）を捉える手法であるトランジット法によって行われました。このトランジット現象のデータは、アメリカ航空宇宙局（NASA）の宇宙望遠鏡TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）によって収集されたものです。具体的には、2020年3月から4月にかけて行われたグリーゼ486周辺の観測で、TESSは周期的な減光パターンを検出し、これが惑星候補として「TOI-1827.01」と名付けられました。「TOI」は「TESS Object of Interest」の略で、TESSが捉えた観測データから惑星が存在する可能性のある天体をリストアップしたカタログを指します。このTESSの観測結果を受けて、日本の研究チームは地上から追加の観測を実施しました。その結果、TESSのデータが示した減光が実際に惑星によるものであることが確認され、グリーゼ486bの発見へと繋がりました。

特徴

グリーゼ486bは、岩石で構成される地球型惑星と考えられています。その大きさは地球と比較して、半径が約1.31倍、質量は約2.82倍と測定されており、これは地球サイズの惑星とより大きなスーパーアースのちょうど中間に位置するような規模です。これらの数値から計算される惑星の密度は、地球の約1.3倍にあたる毎立方センチメートル7.0グラムに達します。また、表面での重力は地球の約1.65倍にもなります。この惑星の最も顕著な特徴の一つは、主星グリーゼ486から非常に近い軌道を周回していることです。わずか約260万キロメートルという距離で、約1.5日という短い周期で公転しています。この近さゆえに、惑星の表面は非常に高温で、平衡温度は約428℃（701 K）にもなります。これは金星の表面温度に近い環境であり、地球に存在するような生命が生存するには不適当であると考えられています。また、主星との距離が近いため、強い潮汐力の影響を受け、常に同じ面を主星に向け続ける潮汐固定状態にある可能性が高いと予測されています。

科学的に見て、グリーゼ486bは非常に価値のある天体です。公転周期が短く、トランジットを起こすうえ、表面温度も比較的高いことから、将来の観測、特に大気の組成を調べるトランジット分光法に適していると考えられています。さらに、トランジットを起こすことが確認されている既知の太陽系外惑星の中では、地球から見て3番目に近い距離に位置していることもあり、研究者たちは、将来的に地球型惑星の大気を詳しく調査する上での最優先候補の一つとして、この惑星に大きな期待を寄せています。

名称

グリーゼ486bとその主星グリーゼ486は、国際天文学連合（IAU）が主催した「太陽系外惑星命名キャンペーン2022（NameExoWorlds 2022）」において、公募による命名の対象となりました。このキャンペーンは、IAUが「持続可能な発展のための国際基礎科学年（IYBSSD2022）」に参加していることを記念して企画されたものです。世界中から集まった提案の中から選考が行われ、2023年6月に正式な名称が発表されました。主星グリーゼ486は「Gar」、惑星グリーゼ486bは「Su」と名付けられました。これらの名称は、バスク語に由来しています。「Gar」はバスク語で「炎」を、「Su」はバスク語で「火」をそれぞれ意味します。この二つの言葉は、バスク語で情熱や熱狂を表す慣用句「su eta gar」（火と炎）に由来しており、危険さと守護という二面性を象徴しているとされています。

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