グリーゼ581b

グリーゼ581b

グリーゼ581b（Gliese 581b）は、地球から見ててんびん座の方向におよそ20光年離れた場所にある赤色矮星、グリーゼ581の周囲を公転する太陽系外惑星です。分類としては「ホット・ネプチューン型」に位置づけられています。

発見の経緯

この惑星は、フランスとスイスの天文学者からなるチーム（ミシェル・マイヨールらが主導）によって発見されました。その存在は2005年11月30日に公表され、発見当時は既知の太陽系外惑星の中で最小クラスの質量を持つ天体として注目を集めました。また、赤色矮星の周囲を公転している惑星としては、グリーゼ876やグリーゼ436などに続いて5番目の発見例となりました。

惑星の検出には、チリにあるラ・シヤ天文台の観測装置HARPS（高精度視線速度系外惑星探査装置）が用いられました。HARPSによる精密な観測により、中心星グリーゼ581が惑星の重力によってわずかに揺らぐ様子、すなわち視線速度の変化が捉えられ、惑星bの存在が確認されました。この発見を報告する論文は、ヨーロッパの天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』にレター論文として掲載されました。

軌道と物理的性質

グリーゼ581bは、少なくとも地球の約16倍の質量を持つことが分かっています。これは太陽系の海王星とほぼ同程度の質量にあたります。地球からの観測では、惑星が恒星の手前を通過する「トランジット」現象は確認されていません。このことから、惑星の軌道面が地球から見て恒星の正面を通過しない角度になっていることが推測され、軌道面の傾斜角は88.1度以下と考えられています。

グリーゼ581系には、惑星bの他にc, d, eが存在しており、それらの軌道安定性に関する動力学シミュレーションが行われています。このシミュレーションによると、4つの惑星の軌道面はほぼ同じ平面上にあると推定されています。もし惑星bの実際の質量が最低質量の1.6倍から2倍を超えると、特に惑星bと内側の惑星eとの相互作用により軌道が不安定になる可能性が高いという結果が出ています。このことから、グリーゼ581bの質量の上限は、地球の約30.4倍（海王星の約1.77倍）程度ではないかと見積もられています。

中心星グリーゼ581からの平均距離は約600万キロメートル（約0.041天文単位）と非常に近く、わずか5.4日という短い公転周期で恒星の周囲を回っています。ちなみに、太陽系で最も内側を公転する惑星である水星は、太陽から平均約5800万キロメートル（約0.387天文単位）の距離を約88日かけて一周しています。グリーゼ581bがいかに中心星に近い軌道を高速で公転しているかがわかります。

特徴と未解明な点

グリーゼ581bは、質量や表面温度などの面で、別の赤色矮星グリーゼ436を公転する惑星グリーゼ436bと類似している点が指摘されています。また、グリーゼ581bもグリーゼ436bと同様に、中心星からのコロナ質量放出などの影響を受けている可能性が考えられています。しかし、グリーゼ581bは恒星の手前を通過するトランジットを起こさないため、大気の組成や詳しい物理的性質など、これ以上の詳細な情報は現時点ではほとんど得られていません。

グリーゼ581bは、発見当時の系外惑星観測における技術的到達点を示すとともに、赤色矮星系における多様な惑星の存在を示唆する重要な発見でした。今後の観測技術の進歩により、その詳細な性質が解明されることが期待されます。

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