グリーゼ876

グリーゼ876とは

グリーゼ876（Gliese 876）は、別名ロス780（Ross 780）とも呼ばれる、みずがめ座の方向、地球から約15光年の距離に位置する赤色矮星です。この恒星は、太陽系外惑星を複数持つことで知られており、惑星系の研究において重要な存在となっています。

恒星の特徴

グリーゼ876は、太陽の約0.334倍の質量、0.376倍の半径を持つ小さな恒星です。スペクトル型はM4V（SIMBADではM3.5V）に分類され、表面温度は約3473Kと太陽の約6割。明るさは太陽のわずか1.3%程度です。また、りゅう座BY型変光星としても知られており、明るさがわずかに変動します。年齢については1億年から50億年と大きな幅があり、まだ正確には特定されていません。

2012年までは、複数の惑星を持つ恒星としては太陽系に最も近い存在でした。その後、11.8光年離れたくじら座τ星系が発見されたことで、最も近い恒星ではなくなりました。

惑星系

グリーゼ876の惑星系は、複数の太陽系外惑星が発見されています。その中でも、グリーゼ876b、c、d、eは、それぞれ2000年、2005年、2010年に発見されました。さらに、未確認の惑星としてfとgが2014年に発見の可能性が発表されました。

惑星の中でも特に興味深いのは、巨大ガス惑星とされるグリーゼ876b、c、eです。これらの惑星は、公転周期がそれぞれ120日、60日、30日という4:2:1の軌道共鳴の関係にあります。この軌道共鳴は、木星のガリレオ衛星（イオ、エウロパ、ガニメデ）に見られるものと同様です。

最も内側を公転するグリーゼ876dは、質量が小さいことから岩石質のスーパーアースであると考えられています。しかし、主星からわずか0.021AU（約300万km）という非常に近い距離を約1.93日で公転しているため、表面温度は数百度に達すると推定され、生命が存在する可能性は低いとされています。スピッツァー宇宙望遠鏡による観測では、グリーゼ876dの半径は地球の約1.23倍から2.27倍と推定されています。

2014年には、新たにグリーゼ876fとグリーゼ876gという2つの惑星の存在の可能性が発表されました。グリーゼ876fはdの外側、gはfの外側を公転しており、質量はdと同程度とみられ、スーパーアースの可能性があるとされています。ただし、これら2つの惑星は現在、未確認の惑星として扱われることが多く、太陽系外惑星エンサイクロペディアには登録されていますが、SIMBADやNASA Exoplanet Archiveには登録されていません。

グリーゼ876の惑星系は、赤色矮星の周りで発見された最初の惑星系の一つです。系外惑星の初期の探索では、赤色矮星はその暗さから視線速度法によるサーベイの対象から除外されていましたが、100個以上の系外惑星が発見された2003年の時点でも、グリーゼ876は惑星を持つことが知られている唯一の赤色矮星でした。

まとめ

グリーゼ876は、その特異な惑星系と、赤色矮星における惑星探査の歴史的な意義から、今後も研究が進められていくことが期待される天体です。特に、軌道共鳴を示す惑星の存在は、惑星形成のメカニズムを理解する上で非常に重要な手がかりとなります。

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