グリーゼ806

グリーゼ806

グリーゼ806（Gliese 806）は、地球から見てはくちょう座の方向、明るい恒星デネブの南東およそ1度の位置にある恒星です。視等級は+10.79と暗く、肉眼で観測することはできません。年周視差による測定から、太陽からの距離は約39.3光年と計算されています。この恒星は、秒速マイナス24.6キロメートルの視線速度で太陽系に接近しており、将来的に約198,600年後には30.1光年以内まで近づくと予測されています。

恒星の物理的性質

グリーゼ806は、スペクトル分類が「dM1.5」とされており、これは太陽よりも小さく温度の低い赤色矮星であることを示しています。M型主系列星に分類され、中心部での水素の核融合反応によってエネルギーを生み出しています。恒星の年齢はおよそ30億年と考えられています。質量と半径はいずれも太陽の約42パーセント程度です。表面温度を示す有効温度は約3,586ケルビンで、太陽の表面温度（約5,778ケルビン）よりもかなり低い温度です。光度は太陽のわずか0.3パーセントしかありません。予測される自転速度は秒速0.46キロメートルです。

惑星系

グリーゼ806の周囲には、複数の太陽系外惑星が存在する可能性が探られてきました。

初期の探査: 1989年、研究者のMarcyとBenitzは、ドップラー分光法を用いた観測から、約416日の周期を持つ信号を検出しました。これにより、質量がおよそ太陽の0.011倍の伴星、あるいは大きな惑星が存在する可能性が示唆されました。しかし、この時点ではその存在を確定するには至りませんでした。

TESSによる観測: その後、トランジット系外惑星探索衛星TESSによる観測データから、恒星の手前を周期的に通過する（トランジットを起こす）可能性のある惑星候補が見つかりました。この候補は、公転周期が1日未満という非常に短いものでした。

* 2023年の確認: 2023年1月に行われた研究で、TESSが見つけた短い周期の惑星候補の存在が確定しました。さらに、この研究ではドップラー分光法による観測も行われ、恒星の手前を通過しない別の惑星が発見されました。この観測では、他にも周期性を示す信号が検出され、3番目の惑星が存在する可能性も示唆されましたが、この信号が惑星由来であるかは現時点では確認されていません。

これまでに存在が確定した2つの惑星は、いずれも地球より大きな質量を持つ「スーパーアース」に分類されます。グリーゼ806の惑星系は、今後もさらなる観測による詳細な解明が期待されています。

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