グリーピルの予言

グリーピルの予言（Grípisspá）

『グリーピルの予言』は、古エッダに収められた古ノルド語による詩です。別名『ファーヴニル殺しのシグルズの歌　その一』（Sigurðarkviða Fáfnisbana I）とも呼ばれています。この詩は、英雄シグルズ（ゲルマン神話のジークフリート）が、自身の運命について従兄であるグリーピルに予言を求める物語です。古エッダに収録されている一連のシグルズの物語群の冒頭に位置づけられています。

内容

物語は大きく分けて二つの部分から構成されています。

導入と前半の予言（1-23節）: シグルズがグリーピルの館を訪れ、面会する場面から始まります。グリーピルは、シグルズが竜ファーヴニルと鍛冶師レギンを討ち、ヘイミルの客人となるまでの運命を予言します。
後半の予言（24-53節）: シグルズが、ヘイミルの養女であるブリュンヒルドの恨みを買い、最終的に殺されてしまうまでの悲劇的な運命が語られます。

他の文献との関係

『グリーピルの予言』は、他の北欧の伝承文学作品とも密接な関わりを持っています。

スノッリのエッダ: スノッリ・ストゥルルソンによって編纂された『スノッリのエッダ』には、グリーピルは登場しません。
ヴォルスンガ・サガ: 『ヴォルスンガ・サガ』第16章には、グリーピルが登場し、同様の予言を行う場面が描かれています。
* ニーベルンゲンの歌: 中世ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場するジークフリートの妻クリームヒルトは、北欧神話ではシグルズの妻グズルーンの母として登場します。グズルーンの母としてクリームヒルトの名が登場する文献は、『グリーピルの予言』の他に、古エッダの「グズルーンの歌 その２」「オッドルーンの嘆き」「アトリの言葉」などがあります。また、『スノッリのエッダ』や『ヴォルスンガ・サガ』においても、クリームヒルトはグズルーンの母とされています。

ブリュンヒルドの恨み

『グリーピルの予言』におけるシグルズがブリュンヒルドの恨みを買う原因は、シグルズがグンテルに姿を変えてブリュンヒルドと関係を持ったためとされています。この出来事を示唆する記述は、古エッダの中では他に「ブリュンヒルドルの冥府騎行」に見られるのみです。一方、『スノッリのエッダ』や『ヴォルスンガ・サガ』では、シグルズがグンテルに変装した経緯がより詳細に語られています。

『グリーピルの予言』は、英雄シグルズの生涯における重要な出来事を予言という形で描き出し、彼の英雄譚全体を理解する上で欠かせない作品と言えるでしょう。

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