グロブダー

グロブダー (GROBDA)

『グロブダー』は、日本のゲームメーカーであるナムコが1984年12月にアーケード向けに稼働を開始した固定画面タイプのシューティングゲームです。西暦20XX年を舞台に、プレイヤーは自機である戦車「グロブダー」を操作し、「バトリング」と呼ばれる未来の戦闘競技に参加します。フィールド内に配置された全ての敵機を破壊することでステージクリアとなりますが、大型砲台であるフォートレスは破壊必須ではありません。

ゲームシステムは、レーザー砲による多方向攻撃と、一時的に敵の攻撃を防ぐエネルギーシールドを駆使して戦うのが基本です。ステージは「BATTLING」として区切られ、1から99まで存在します。各ステージでは、出現する敵の種類や数、初期配置、障害物の配置が固定されており、それぞれ異なる難易度を持っています。ゲーム開始時には任意のステージを選択してプレイすることも可能です。特に99面は極めて高い難易度で知られています。

高得点を狙う上では、敵の誘爆を利用するテクニックが重要です。敵を密集させて一網打尽にすることで、通常攻撃よりも高いスコアが得られます。後に敵破壊時の誘爆得点が表示される改良版も登場しましたが、PlayStation版「ナムコミュージアム Vol.2」には初期バージョンのみが収録されています。

スクロールが一般的になりつつあった当時のアーケードゲームとしては珍しく、固定画面を採用しています。独特のシステムとして、自機や敵の破壊時に発生する爆風は周囲のキャラクターにもダメージを与えます。エネルギーシールドは強力な防御手段ですが、使用するとエネルギーを大きく消費し、無敵ではありません。破壊された敵は瓦礫としてフィールドに残り、その上では自機や敵の移動速度が低下します。ただし、フォートレスの残骸は通行不可能です。

自機の移動速度、シールド、ビームの性能は画面下のエネルギーゲージの状態に依存します。エネルギーは時間と共に自動回復しますが、回復速度は持続的な行動や時間経過で遅くなります。エネルギーが少なくなるとシールドが張れなくなり、ビーム出力も低下します。ステージ内の障害物は遮蔽物として利用できる一方で、移動ルートを制限することもあります。また、一つのステージに時間をかけすぎると敵の攻撃が激しくなるなど、多様な要素が戦略性を高めています。中には、自機をあえて自爆させることで周囲の敵を巻き込みクリアを狙うといったユニークな攻略法まで存在しました。特に難攻不落とされた99面には、エネルギー温存とシールド維持からの自爆で敵を道連れにするという攻略法が考案されるなど、プレイヤーの創意工夫が試されるゲームでした。99面の出荷設定でのワンコインクリアは長らく達成者が現れず、最初の事例が確認されたのは2015年というほどです。初期設定の残機数や、特定の条件下で隠しメッセージが出現するなど、細部にもユニークな特徴が見られます。

ゲームの舞台となる西暦20XX年の世界では、コンピューターの発達により人間の操作負担が軽減された結果、機械を操る楽しみが競技へと発展しています。アステロイドベルトでのロケットレースや、海中でのサブマリンジムカーナと並び、コロシアムで行われる戦闘競技バトリングが人気を集めています。バトリングを統括するNBA（National-Battling-Association）は、様々なマシーンやルールを規定し、競技を取り仕切っています。バトリングのトップランカーは富と名声を手にし、若者たちの憧れの存在となっています。プレイヤーは、このバトリング競技において自機「グロブダー」を操縦する戦士なのです。

登場する敵キャラクターは多種多様です。プレイヤーが操る自機「グロブダー」は、レーザー砲「エナジー・キャノン」とシールド機能を備え、エネルギーゲージを管理しながら戦います。敵キャラクターには、シールドを持たない「エネミータンク」、シールドを張る能力を持つ「オレンジハイパータンク」や「イエローハイパータンク」といった戦車タイプがいます。また、機動性の高い砲台タイプとして、誘導弾を発射する「グリーンフロッサー」や、より高速で多弾を放つ「ブラウンフロッサー」が登場します。最も大型の敵である「フォートレス」は四方へのビームや大型誘導ビームを発射しますが、動きは遅く、破壊せずともステージクリアが可能です。

開発は「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」を手掛けたチームを中心に行われました。遠藤雅伸氏がプロデューサーとゲーム・デザインを担当し、「低予算短時間」での制作を目標に約3ヶ月で完成させました。発想の原点は「グロブダーに何かをさせること」だったと語られています。ゲーム開始時の特徴的な音声「Get Ready!」は遠藤氏本人の声です。音楽は「ディグダグ」の慶野由利子氏が担当しており、ネームエントリー曲には「ゼビウス」のフレーズが隠されています。また、戦車の移動速度に合わせてエンジン音のテンポと音質が変化するというサウンドシステムを実現するため、慶野氏自身がその箇所のプログラムを直接記述したという珍しいエピソードもあります。

アーケード稼働後、1985年から1986年にかけて、当時の主要なパソコン機種であるNECのPCシリーズ（PC-6001mkII, PC-6601, PC-8001mkIISR, PC-8801mkIISR）、シャープのMZ-1500やX1などへ電波新聞社によって移植されました。これらのパソコン版には、アーケード版とは異なるグラフィックながら、2P対戦モードやエディットモードが追加されたPC-6001mkII版、隠れキャラクターや追加ステージが登場するX1/MZ-15版など、独自の要素が盛り込まれたものもあります。一方、ファミリーコンピュータなどの当時の家庭用ゲーム機への移植は長らく行われず、1996年にPlayStation版『ナムコミュージアム VOL.2』で初めて実現しました。以降、PSPやXbox 360の『ナムコミュージアム』シリーズ、Wiiのバーチャルコンソールアーケード、そしてNintendo SwitchやPlayStation 4|PlayStation_4のアーケードアーカイブスなど、様々なプラットフォームで復刻・配信されています。

商業的な大ヒットとはなりませんでしたが、その奥深い戦略性と中毒性のあるゲームシステムは一部のマニアから熱狂的な支持を受け、リピーターを生み出し、多くの機種への移植に繋がりました。データサイトでの評価は平均的ですが、固定画面ながらも高い競技性と攻略の深さを持つ作品として、今なお語り継がれています。

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