ケイマフリ

ケイマフリ（Cepphus carbo）

ケイマフリは、チドリ目ウミスズメ科に属する海鳥の一種です。主に北海道の一部地域、特に天売島や知床半島などで繁殖が確認されています。

形態

体長は約40cmで、ハトよりやや大きいサイズです。季節によって羽の色が変化するのが特徴です。

夏羽: 全身が黒色で、目の周囲から目尻にかけて白い模様が現れます。
冬羽: 目の周りの白い模様は小さくなり、目の周りに白いリング状の模様（アイリング）が見られます。また、喉から腹部にかけて白色になります。

足は鮮やかな赤橙色をしており、これが名前の由来となっています（アイヌ語名の「ケマフレ（kemahure）」は「足が赤い」という意味）。英名では、目の周りの模様から「Spectacled Guillemot（眼鏡をかけたウミガラス）」と呼ばれています。

幼鳥の第1回冬羽は成鳥の冬羽に似ていますが、目の周りのアイリングが不明瞭です。近縁種のウミバトと似ていますが、ウミバトの夏羽は顔が黒く翼に白い模様があり、冬羽ではアイリングがないことで区別できます。

生態

ケイマフリは、春の繁殖期になると断崖に集まります。オスは岩の上に登ってメスを待ち、交尾を行います。つがいになると、岩の隙間で小石を取り除いたり、枯れ草などを運び込んだりして巣を作ります。一度の産卵で2つの卵を産み、雌雄が交代で約1ヶ月間抱卵します。孵化した雛には、親鳥が約1ヶ月以上かけて魚を与えて育てます（天売島での観察例では約40日）。

冬は繁殖地周辺の海上で小さな群れを作って生活しますが、人目に触れる機会は多くありません。潜水によって、カジカなどの魚類、小型のカニなどの甲殻類、小型の頭足類などを捕食します。

その美しい鳴き声から「海のカナリア」とも呼ばれています。一方で、ウミガラスと同様に、ハシブトガラスやオオセグロカモメなどの大型の鳥類から捕食されることも多く、生存を脅かされています。

分布

カムチャツカ半島東岸からオホーツク海、日本海にかけて分布しています。日本国内では、北海道の羽幌町天売島、知床半島、積丹半島などに繁殖地が点在しています。まれに本州沿岸部など、より南方でも確認されることがあります。

天売島は日本国内最大の繁殖地であり、かつては200羽を下回る時期もありましたが、環境省の調査によると、2020年には504羽が飛来し、200つがいが生息するまでに回復しました。しかし、生息数の増加に伴い、他のつがいの巣を奪う行動も見られるようになり、営巣に適した場所の不足が懸念されています。

保全状況

ケイマフリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類 (VU) に指定されており、絶滅の危険性が高いと評価されています。生息地の保護や、捕食者からの保護対策などが求められています。

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