ケショウヤナギ

ケショウヤナギ（化粧柳）とは

ケショウヤナギ（学名: Salix arbutifolia）は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉高木です。名前の由来は、春先に白い粉を吹いたように見える樹皮が、まるで化粧をしているように見えることから、植物学者の牧野富太郎によって名付けられました。

別名として、カラフトクロヤナギやクロヤナギと呼ばれることもあります。これは、樹皮の白い粉に注目するのではなく、太くなった幹が黒色を帯びた褐色になることに由来しています。

分布と生育環境

ケショウヤナギは、アジア東部の寒冷地に多く分布しており、具体的には朝鮮半島北中部、中国東北部、バイカル湖以東のシベリア、カムチャツカ、サハリンなどに自生しています。日本では、北海道の日高・十勝地方や、長野県の梓川上流部などで見られます。

特に、北海道の札内川流域では日本最大の群落を形成しています。ケショウヤナギは、他の植物が生育しにくい礫質の河原でも生長できるのが特徴です。また、河床の移動が激しい場所でも、洪水による河岸浸食によって倒壊しても、新たな河原が形成されることで更新を繰り返します。

長野県では、上高地で最初に発見され、その後、梓川の河原でも自生が確認されました。現在では、松本市波田地区や梓川地区でも群落が見られます。また、2012年には大町市の鹿島川でも幼木が発見されました。

特徴

ケショウヤナギは、樹高30メートルにもなる高木です。若い幹や枝には白いロウ質の粉がついており、これが名前の由来となっています。葉は互生で、長さ5～7.5センチ[[メートル]]の長楕円形です。

花期は、松本盆地で4月下旬、上高地ではそれより1か月遅れます。雌雄異株で、風媒花です。雄花には雄しべが5本、雌花には雌しべがあり、花弁や蜜腺はありません。花は尾状花序で、小さい花が集まった穂状になり、咲き終わると花序全体が落ちます。

種子には柳絮と呼ばれる銀色の綿毛がついており、風に乗ってよく飛散します。しかし、種子の寿命は1か月程度と短く、生育に適した場所でなければ発芽・定着できません。

若木の生長は早く、よく花をつけますが、接ぎ[[木]]や挿し[[木]]は難しく、移植も容易ではありません。冬の間に枝をとって挿し[[木]]をすれば発根するとも言われています。

保全状況

ケショウヤナギは、かつて環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に指定されていましたが、2007年に削除されました。しかし、生育地の環境変化や開発などにより、個体数の減少が懸念されており、今後も注意深く見守る必要があります。

参考文献

辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年
山崎林治・柴野武夫 (1992) 「本州のケショウヤナギ」（非売品）

関連項目

ヤナギ科
梓川

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