ケニア航空507便墜落事故

ケニア航空507便墜落事故の概要

2007年 5月5日、カメルーンのドゥアラ国際空港で、ケニア航空507便（ボーイング737-8AL型機）が離陸直後に墜落し、乗員乗客114名全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。この事故は、カメルーン史上最悪の航空事故となり、ボーイング737-800型機としては4番目に死者数の多い事故として記録されています。

事故機は、フェリックス・ウフェ＝ボワニ国際空港からジョモ・ケニヤッタ国際空港へ向かう途中、ドゥアラ国際空港を経由する便でした。離陸後間もなく、機体は小さな破片となって空港から5.42km南の沼地に沈み、生存者は確認されませんでした。

カメルーン民間航空局（CCAA）の調査により、事故原因は離陸直後に機体が大きく傾いたにもかかわらず、パイロットが適切な修正操作を行えなかったことによる制御不能と判明しました。

事故の詳細

事故機について

事故機のボーイング737-8AL（登録番号：5Y-KYA）は、2006年に製造され、同年10月27日にケニア航空に納入されたばかりの新しい機体でした。総飛行時間は2,100時間で、2基のCFMインターナショナルCFM56-7B26エンジンを搭載していました。機体はシンガポール・エアクラフト・リース・エンタープライズから購入したばかりで、納入からわずか6ヶ月あまりで全損となりました。

乗員乗客

乗客105人は26ヶ国籍に及び、カメルーン人が37人、ケニア人が9人でした。乗客の多くはドゥアラ国際空港から搭乗しており、フェリックス・ウフェ＝ボワニ国際空港から搭乗したのは17人でした。乗員6人は全員ケニア人でした。また、乗客にはケニア航空のエンジニアやデッドヘッド（業務外搭乗）の客室乗務員も含まれていました。

機長は52歳の男性で、ケニア航空に20年近く勤務しており、総飛行時間は8,682時間、ボーイング737-800では158時間の経験がありました。副操縦士は23歳の男性で、ケニア航空に1年ほど勤務しており、総飛行時間は831時間、ボーイング737-800では57時間の経験がありました。

事故の経緯

507便は、事故当日深夜にドゥアラ国際空港を離陸する3便のうちの1つでした。他の2便は悪天候のため離陸を延期していましたが、507便のパイロットは離陸が1時間近く遅れていたため、天候の回復を期待して離陸を決断しました。

離陸後、機体は右に傾き始め、機長は操縦桿を左に操作しました。離陸24秒後、機長は副操縦士に自動操縦装置の起動を求めましたが、副操縦士はこれを確認せず、自動操縦も起動しませんでした。その後、機体は34度まで傾き、機長が操縦桿を操作した結果、さらに50度近くまで傾斜しました。機長は自動操縦を起動しようとしましたが、操縦桿の操作を続けたため、機体は制御不能に陥りました。

副操縦士は機長に「左、左、左、左に修正して」と伝えましたが、機体は高度700mで右に115度まで傾き、湿地帯に墜落しました。墜落時、機体は右に60度傾き、48度の機首下げ状態でした。

事故調査

カメルーン政府は事故調査委員会を設置し、アメリカの国家運輸安全委員会（NTSB）も調査を支援しました。

当初、墜落原因は豪雨によるエンジンの停止が疑われましたが、フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）の解析により、パイロットの操作ミスが原因であることが判明しました。

最終報告書では、機長が離陸後、数回操縦桿を左に操作したこと、副操縦士が自動操縦装置を作動させなかったこと、パイロットが空間識失調に陥ったこと、さらに機長が副操縦士を不適切な言葉で指導・罵倒するなど、クルー・リソース・マネジメント（CRM）が機能していなかったことなどが事故原因として挙げられました。また、不適切な運航管理や飛行監視手順の不遵守も事故の一因とされました。

映像化

この事故は、ドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第18シーズン第10話「Stormy Cockpit」で映像化されています。

ケニア航空507便墜落事故