ケネス・マクミラン

ケネス・マクミラン（Sir Kenneth MacMillan、1929年12月11日 - 1992年10月29日）は、イギリスを代表するバレエ振付家の一人です。ドラマティックな物語性と、ダンサーの感情を深く掘り下げる演出で、数々の名作を世に送り出しました。

生い立ちと初期のキャリア

スコットランドのダンファームリンで生まれたマクミランは、14歳の時に偶然バレエ雑誌を目にしたことをきっかけにバレエの世界に足を踏み入れます。地元のバレエスクールで学び始め、わずか9ヶ月後には、サドラーズ・ウェルズ・バレエスクール（後のロイヤル・バレエスクール）に奨学生として入学するという才能を発揮しました。さらにその翌年には、国立バレエ団となったばかりのサドラーズ・ウェルズ・シアター・バレエ（後のロイヤル・バレエ団）に入団し、プロのダンサーとしてのキャリアをスタートさせました。

ダンサーとして活動する傍ら、マクミランは振付家としての才能も開花させていきます。処女作「夢遊病」を発表後、「隠れ家」（1956年）や「招待」（1960年）など、意欲的な作品で注目を集めました。しかし、舞台恐怖症によるスランプに苦しみ、同僚のジョン・クランコの勧めにより、振付に専念することになります。

振付家としての飛躍

振付家として再出発したマクミランは、挑戦的で野心的な作品を次々と発表し、批評家からの高い評価を得ました。彼の作品は、ロイヤル・バレエ団の伝統であるドラマティックな物語バレエを基礎としながらも、女性ダンサーの情感と官能美を最大限に引き出すことに重点を置いている点が特徴です。

特に有名な作品は、「ロミオとジュリエット」（1965年）です。当時ロイヤル・バレエ団のスターだったマーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフが主演を務め、記録的な大ヒットとなりました。この作品は、マクミランの才能を広く知らしめることとなり、彼の代表作の一つとして、今もなお世界中で上演されています。

ミューズとの出会いと創作活動

マクミランの創作活動には、常に「ミューズ」と呼べる存在の女性ダンサーがいました。リン・シーモアとの出会いもその一つでしたが、彼女の起用を巡ってバレエ団と対立し、1966年にはシーモアと共にベルリン・ドイツ・オペラ・バレエ団に移籍するという決断をします。その後、1970年にフレデリック・アシュトンの後任としてロイヤル・バレエ団の芸術監督に就任（1977年まで）、アンソニー・ダウエルとアントワネット・シブリーを主演に「マノン」（1974年）、リン・シーモアを主演に「マイヤリング（うたかたの恋）」（1978年）などを振り付けました。

1980年代には、アレッサンドラ・フェリという新たなミューズを得て、1984年にアメリカン・バレエ・シアターにミハイル・バリシニコフとの共同芸術監督に就任した際にも、彼女をアメリカに同行させました。

後年と遺産

1983年にナイトの称号を授与されたマクミランは、フェリがアメリカに残った後もロイヤル・バレエ団で創作活動を続け、ダーシー・バッセルら新たな才能を見出しました。バッセルのために「パゴタの王子」を振り付けるなど、後進の育成にも力を注ぎました。

1992年、公演中の楽屋で心臓発作により急逝。62歳という若さでした。しかし、彼の作品は今もなお世界中のバレエ団で上演され続けており、その影響力は衰えることがありません。ケネス・マクミランは、20世紀を代表する偉大なバレエ振付家として、その名を歴史に刻んでいます。

代表作

招待（1960年）
ロミオとジュリエット（1965年）
アナスタシア（1971年）
マノン（1974年）
マイヤリング（1978年）
パゴタの王子（1989年）

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