ケフケン島沖海戦 (1915年8月)

ケフケン島沖海戦の概要

1915年8月23日、第一次世界大戦中に黒海で発生したケフケン島沖海戦は、ロシア帝国海軍黒海艦隊とオスマン帝国海軍の間で繰り広げられた海戦です。この海戦は、水上艦艇と潜水艦が協同して作戦を成功させた当時としては稀な事例として知られています。

戦いの経過

オスマン帝国の石炭輸送船団

1915年夏、オスマン帝国はゾングルダクの炭鉱地帯から首都イスタンブールへ石炭を輸送する船団を組織していました。ロシア帝国海軍もこの動きを看過せず、警戒を強めていました。

8月16日、オスマン帝国の駆逐艦「ヌムーネイ・ハミイェト」は、3隻の輸送船「エレソス」、「イッリルヤ」、「セイフン」を護衛し、ゾングルダクに入港しました。輸送船は、約10,000トンの石炭を積載する予定でした。積荷の積載作業中、ロシアの艦隊水雷艇「ブィーストルイ」と「プロンジーテリヌイ」が接近を試みましたが、防波堤に阻まれ砲撃はできませんでした。オスマン船団は無事に石炭の積み込みを終えました。

この頃、ロシアは水上艦艇に加え、潜水艦隊の活動を活発化させていました。8月21日には、潜水艦「ネールパ」がケフケン島とボスポラス海峡間の海域に到着し、警戒任務に就いていた潜水艦「チュレーニ」と交代しました。

オスマン船団の出港

8月22日から23日にかけての深夜、「ヌムーネイ・ハミイェト」を伴ったオスマン輸送船団はゾングルダク港を出港しました。午前5時には、輸送船団は防護巡洋艦「ハミディイェ」および駆逐艦「ムアーヴェネティ・ミッリイェ」と合流しました。輸送船団は海岸線沿いを航行し、「ハミディイェ」と2隻の駆逐艦が沖側を護衛しました。輸送船にはイスタンブールへ供給する大量の石炭が積まれていました。

一方、8月20日から炭鉱地帯への攻撃作戦を行っていたロシア黒海艦隊の艦隊水雷艇「ベスポコーイヌイ」と「グネーヴヌイ」は、オスマン船団の出港をいち早く察知しました。両艦は沖合で警戒中の潜水艦「ネールパ」と艦隊水雷艇「ブィーストルイ」および「プロンジーテリヌイ」にこの情報を伝えました。「ネールパ」はサカリヤ川河口付近で敵護送船団を発見し、付近を警戒中の艦隊水雷艇に無線で通報しました。

襲撃

ケフケン島沖に差し掛かった時、オスマン帝国の輸送船団はロシアの艦隊水雷艇の迎撃を受けました。午前6時40分、約12000メートルから砲撃戦が始まりました。距離が遠かったため、オスマン帝国の駆逐艦は戦闘に参加できず、戦闘は主に「ハミディイェ」とロシア艦の間で行われました。「ハミディイェ」は搭載する152mm砲を使用しましたが、すぐに故障し、艦尾の砲で33発の砲弾を発射しました。ロシア側の砲撃が正確だったのか、オスマン帝国側の射撃が拙劣だったのかは不明ですが、いずれにせよ、「ハミディイェ」は輸送船団を見捨てて逃走を開始しました。2隻の駆逐艦もすぐに続きました。

「ハミディイェ」は巡洋戦艦「ヤウズ・スルタン・セリム」に救援を要請し、「ヤウズ・スルタン・セリム」は午前9時にボスポラス海峡から姿を現しました。「ハミディイェ」はロシア艦の攻撃を避けるために機動しましたが、その結果、輸送船団からますます遠ざかってしまいました。さらに、潜水艦「ネールパ」の潜望鏡を発見したことで、回避行動はさらに激しくなりました。ロシア艦隊は「ハミディイェ」が船団から遠ざかるのを待ち、午前9時23分に輸送船団へ向けて進路を変えました。

まもなく「ハミディイェ」も反転して追撃を開始しましたが、ロシア艦隊は「ハミディイェ」が追いつくよりも早く目標に到達し、午前10時20分に輸送船への砲撃を開始しました。オスマン帝国の輸送船は、敵艦の接近を見てサカリヤ川付近への座礁を試みましたが、ロシア艦の砲撃により全船が炎上しました。「ヤウズ・スルタン・セリム」の到着は遅すぎ、さらに「ネールパ」を警戒したため、積極的な戦闘を避けました。その間に「ネールパ」は石炭を積んだ艀を曳航していた曳船「セイヤル」を発見し、砲撃によって撃沈しました。

その後のネールパ

「ネールパ」は8月24日に「ヤウズ・スルタン・セリム」への攻撃を試みましたが、失敗に終わりました。「ヤウズ・スルタン・セリム」は1600メートルからの反撃で283mm砲弾を浴びせ、「ネールパ」は急速潜航を余儀なくされました。

その後、「ネールパ」は8月27日にケフケン島海域から撤退しました。

戦いの結果

ロシア艦隊は、一方的にオスマン帝国の輸送船3隻を全滅させ、曳船と石炭を搭載した艀も撃沈しました。オスマン帝国が失った石炭の量は、船団だけで10780トンに達しました。

参加艦船

[ロシア帝国海軍]

艦隊水雷艇: 「ブィーストルイ」、「プロンジーテリヌイ」、「ベスポコーイヌイ」、「グネーヴヌイ」
潜水艦: 「ネールパ」、「チュレーニ」

[オスマン帝国海軍]

防護巡洋艦: 「ハミディイェ」
駆逐艦: 「ヌムーネイ・ハミイェト」、「ムアーヴェネティ・ミッリイェ」
輸送船: 「エレソス」、「イッリルヤ」、「セイフン」
曳船: 「セイヤル」

脚注

撃沈された輸送船はマルマラであったとされています。

参考文献

Больных А.Г. Морские битвы Первой мировой: Трагедия ошибок. — М.: АСТ, 2002 (ロシア語)
Напрасные победы (ロシア語)

外部リンク

ЧФ. Краткая хронология. 1915 - Russian Imperial Navy, Российский Императорский Флот (ロシア語)
ЧФ. Краткая хронология. 1915 - Российский Императорский флот / "ИнфоАрт" (ロシア語)
bataille de l'île de Kefken - L'encyclopédie des navires de la guerre 1914-1918 (フランス語)
The Black Sea - The history of the Russian Navy (英語)

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