ケプラー11c

ケプラー11c

ケプラー11cは、地球から見てはくちょう座の方向へ約2000光年離れた位置にある太陽系外惑星です。この惑星は、直径や質量が太陽と極めて類似しているG型主系列星、ケプラー11の周囲を公転しています。その発見は、NASAが運用するケプラー宇宙望遠鏡によるもので、恒星のわずかな光量変化（トランジット）を捉えることで確認されました。

ケプラー11系において、ケプラー11cは恒星から内側へ数えて2番目に位置する惑星です。この惑星は非常に短い周期で恒星の周りを回っており、その公転期間はおよそ13日と35分です。軌道長半径は約0.107天文単位（au）で、これは太陽と水星の間の距離の約4分の1に相当します。公転軌道は離心率が0.026と小さく、ほぼ円に近い形をしています。すぐ内側の惑星であるケプラー11bとは、公転周期が5:4の比率で軌道共鳴している可能性が指摘されています。

ケプラー11cは、2011年2月2日にその存在が公にされ、後日著名な科学雑誌『ネイチャー』にも研究成果が掲載されました。この発見は、ケプラー11系内の他の5個の惑星と同時に行われました。ケプラー計画では、発見された天体に一時的にKOI（Kepler Object of interest）という仮符号を与えており、正式に惑星として承認される前は「KOI-157 c」または「KOI-157.01」と呼ばれていました。系内の惑星には内側から順にb, c, d…と符号が振られ、内側から2番目の惑星であることからcの符号が与えられました。惑星の存在を確認するため、ケプラー望遠鏡による観測データに加え、複数の地上望遠鏡（ヘール望遠鏡、シェーン望遠鏡など）を用いた追加観測が行われました。

物理的な性質について、ケプラー11cの半径は地球の約2.87倍、質量は約2.9倍と推定されています。ただし、質量の推定値については、観測データの解釈や研究によって変動が見られます。特に初期の論文では、ケプラー11bとの重力的な相互作用が複雑であったため、7.4倍から18.3倍と推定値に大きな幅がありましたが、その後の研究で約3倍、あるいは論文によっては約2倍や約6倍といった値が提示されています。これは、惑星間の重力干渉が公転周期に影響を与え、質量測定を困難にしているためです。ケプラー11系の中では、半径・質量ともに3番目に小さい惑星です。トランジットが発生する際、恒星ケプラー11の視等級は0.82 ± 0.01暗くなります。

ケプラー11cは恒星に非常に近いため、表面温度は560℃（833K）にも達すると推定される極めて高温の惑星です。仮に質量を地球の13.5倍とすると、平均密度は2.3 g/cm³と計算され、これは水より高く、木星や土星のようなガス惑星と比較しても高密度です。氷と岩石で構成される冥王星に近い密度ですが、その高温環境を考慮すると、組成は大きく異なると考えられています。鉄の含有量が著しく少なく、ほぼ純粋な珪酸塩を主成分とし、水が存在するとしても「氷」の状態（高温高圧下の特殊な状態）である可能性が示唆されています。また、希薄ながら水素とヘリウムから成る大気を持つと考えられています。かつては水素を豊富に含む大気を持っていたものの、恒星からの強い放射により、長年にわたってその多くが宇宙空間に散逸してしまった可能性が推測されています。ただし、恒星からの距離がより近いケプラー11bと比較すると、ケプラー11cの方が大気喪失は緩やかであったと考えられています。

惑星の親星であるケプラー11は、質量が太陽の0.961倍、半径が太陽の1.065倍と、太陽に非常によく似た恒星です。金属量も太陽とほぼ同じで、恒星の金属量は惑星系の形成に影響を与える指標の一つとされています。ケプラー11系は、ケプラー11cの他に、b, d, e, f, gという複数の惑星を持つ多惑星系であり、ケプラー11gを除く内側の5つの惑星は、いずれも太陽系の水星の軌道よりも内側を公転しています。ケプラー11自体は視等級が暗く、肉眼で観測することはできません。

ケプラー11cを含むケプラー11系の発見は、一つの恒星の周りを複数のトランジット惑星が非常に密接した軌道で公転しているという、それまでに例のない惑星系として、系外惑星研究において重要な発見となりました。

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