ケプラー62b

ケプラー62b

ケプラー62bは、私たちの太陽系からおよそ1200光年離れたこと座の方向に位置する、K型主系列星ケプラー62を公転する5つの既知の系外惑星のうち、最も主星に近い軌道を巡る天体です。この惑星は、恒星の手前を惑星が横切る際に生じるわずかな明るさの変化（トランジット）を捉える方法によって発見されました。その軌道は主星に極めて近いため、表面の有効温度は約750 K（摂氏約477度）に達すると見積もられています。これは太陽系で最も高温の惑星である金星の表面温度を大きく上回っており、理論上は地表の金属が融解している可能性も指摘されています。

発見の経緯

ケプラー62bの発見は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による広範な観測ミッションの一環として行われました。この宇宙望遠鏡は、多数の恒星の明るさを連続的に測定することで、系外惑星が主星面を通過する際の周期的な減光を検出することを目的としていました。2009年に観測を開始したケプラー宇宙望遠鏡は、Kepler Input Catalog（KIC）に登録された約50,000もの恒星を候補天体として観測対象に含めました。ケプラー62星系に対する観測は、2009年5月から2012年3月にかけて実施されました。この観測データから、ケプラー62bによるものと思われる約5.7日周期での周期的な減光が検出され、系外惑星の存在が強く示唆されました。詳細な分析の結果、これが惑星によるトランジットであることが確認され、最終的に系外惑星であると結論づけられました。ケプラー62bの発見は、同僚天体であるケプラー62c, d, e, fの発見や、他のケプラー計画による惑星候補とともに、2013年4月18日に公表されました。

特徴：質量・半径・温度

ケプラー62bは、地球の約1.3倍の半径を持つ系外惑星です。地球よりは大きいものの、天王星や海王星のような巨大ガス惑星よりはかなり小型であるため、スーパー・アース（巨大地球型惑星）と呼ばれるカテゴリに分類されます。先述の通り、主星からの強い放射により、その有効温度は推定で約750 K（摂氏約477度）という高温環境にあります。

現在のところ、ケプラー62bの正確な質量はまだ確定していません。ただし、観測データから質量の上限は地球の約9倍と見積もられており、真の質量はそれよりも小さいと考えられています。いくつかの推定では、地球の約2.1倍程度の質量である可能性が示唆されています。仮に半径が地球の約1.6倍を超え、かつ質量が一定値より大きい場合、岩石質の核の周囲に厚い揮発性物質の層を持つ、ミニ・ネプチューン（小型の海王星型惑星）のような構造になっている可能性も指摘されています。

主星ケプラー62について

ケプラー62bが周回する主星ケプラー62は、スペクトル分類がK型の主系列星です。質量は太陽の約0.69倍、半径は太陽の約0.64倍と、太陽より一回り小さく、温度も低い恒星です。表面温度は約4925 Kであり、これは太陽（約5778 K）よりもかなり低い温度です。年齢は約70億年と推定されており、これは太陽（約46億年）よりも古い恒星であることを示しています。金属量（ヘリウムより重い元素の割合）は比較的少なく、太陽の約42%程度しかありません。明るさも太陽の約21%程度と比較的暗いです。見かけの明るさ（視等級）は14.0等級であるため、肉眼で観測することはできません。ケプラー62星系には、ケプラー62bを含め、合計5つの惑星が発見されています。

軌道の特性

ケプラー62bは主星ケプラー62の周囲を非常に緊密な軌道で公転しており、その公転周期は約5.7日と極めて短いです。軌道長半径は約0.055天文単位（au）であり、これは太陽系において最も内側を公転する水星と太陽の間の距離（約0.387 au）の約7分の1に相当するほどの近さです。この主星からの距離の近さから、ケプラー62bがその表面で受け取るエネルギー量は、地球が太陽から受け取るエネルギー量の約70倍にも達すると計算されています。この膨大なエネルギー流入が、惑星の非常に高い有効温度の主な原因となっています。

ケプラー62星系全体とその惑星、特にケプラー62bは、私たちの太陽系とは異なる環境下で形成・進化する惑星系の例として、系外惑星研究における重要なターゲットの一つとなっています。

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