ケミ (ロシア)

ケミ（Кемь, Kem, フィンランド語: Vienan Kemi）は、ロシア連邦カレリア共和国に位置する歴史ある都市です。白海の西岸に位置する港町であり、ケミ川の河口に開けています。カレリア共和国の首都ペトロザヴォーツクからムルマンスク港へと続く鉄道がこの地を通っており、交通の要衝としても機能しています。

2002年の国勢調査によると、ケミの人口は約14,620人です。沖合には世界遺産に登録されているソロヴェツキー諸島が浮かんでおり、ソロヴェツキー修道院などの歴史的な建造物があります。これらの島々へのアクセス拠点として、ケミは重要な役割を果たしています。

歴史

ケミを含む白海沿岸地域には、ポモールと呼ばれる人々が古くから暮らしていました。ケミの名の初出は1450年の文書に遡り、ノヴゴロド市のポサドニック（市長）であったマルファ・ボレツカヤが、自身の所領であったケミをソロヴェツキー修道院に寄進したと記録されています。その後、ノヴゴロド公国がモスクワ大公国に併合されると、ケミもその支配下に入りました。1657年には、この地に木造の砦が築かれています。

ケミの大聖堂は、1711年から1717年の間に建設されました。この大聖堂は木造建築の傑作として知られ、内部を飾るイコノスタシスは、17世紀にノヴゴロドから運ばれたイコンで彩られています。この大聖堂は、ケミの歴史と文化を今に伝える重要な遺産です。

ソビエト時代には、ソロヴェツキー修道院が政治犯収容所として使用された時期がありました。1926年から1939年の間、ケミからは多くの政治犯を乗せた船が出港しており、その歴史の中で暗い影を落としています。第二次世界大戦直前に収容所は海軍基地に転換され、ケミには冷戦時代、カレリア一帯を管轄する大規模な空軍基地が置かれました。

1978年4月21日に発生した大韓航空機銃撃事件では、不時着した乗客らがヘリコプターでケミ空港に搬送され、その後、市内の公会堂に一時収容されるという出来事もありました。翌日、彼らはムルマンスク空港経由で帰国しており、ケミは国際的な事件の舞台にもなりました。

ケミは、その長い歴史の中で、様々な出来事を経験してきた都市です。ポモールの歴史、修道院との繋がり、ソビエト時代の政治犯収容所の歴史、そして国際的な事件まで、多様な側面を持つケミは、訪れる人々に深い印象を与えることでしょう。

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