ポモール

ポモールの概要

ポモール（ポモールィ）は、ロシア北西部の白海沿岸に居住するスラヴ系民族の集団です。この民族は、12世紀以降に白海の沿岸に進出したロシア人入植者に起源を持ちます。ポモールは、サーミ人やコラ・ノルウェー人地域の東側、ネネツ人地域の西側に位置し、南は白海流域からヴォルガ川流域の分水嶺にまで及びます。

名前の由来

「ポモール」という名称は、オネガとケミの町の間にあるポモールスキー地方（「沿海」）に由来し、インド・ヨーロッパ語族から派生した「море（海）」という語に基づいています。この語源は、ポメラニアの名前にも見受けられます。ポモールには、北極海探検家のセミョン・デジニョフ、学者のミハイル・ロモノーソフなど、有名な歴史的人物が存在します。

歴史的背景

ポモールは12世紀からノヴゴロド公国の探検家によって形成されました。探検家たちは北ドヴィナ川やオネガ川の河口を経て、白海沿岸のビャルマランドに入植し、ホルモゴルイを中心に発展しました。しかし、16世紀末にはアルハンゲリスクが重要な都市として台頭してきます。入植者たちはコラ半島北岸に前哨を設置し、バレンツ海沿岸地域やスピッツベルゲン島、ノバヤゼムリャの探検を行いました。

彼らはアルハンゲリスクからシベリア北部に至る北極海航路を確立し、このルートを通して交易を行いました。特に流氷の海を航海するための「コッチ（koch）」というタイプの船を用いて、16世紀初頭にはマンガゼヤの港を開設しました。さらに、シベリアのインディギルカ川三角州に存在した村の創設者もポモールの影響を受けている可能性があると考えられています。16世紀には、ポモールはスカンジナビアやイギリスとの交易を盛んに行い、シベリア北部で得た産物を西欧に売ることで多くの利益を上げました。

生活様式と文化

ポモールの生活は海に密接に関連しており、漁業や海の哺乳類の捕獲、捕鯨が主な活動でした。また、ツンドラ地帯ではトナカイの飼育も行われていました。ノルウェー北部との間で行われるポモール貿易では、ロシアの穀物とノルウェーの魚が取引され、これはアルハンゲリスクとノルウェーのいくつかの港町で重要な役割を果たしていました。1750年から1920年の間、ノルウェーの漁民とアルハンゲリスク地方の商人との間で盛んだったため、ロシア語とノルウェー語の混合言語であるルッセノルスクが広まりました。ポモールの交易は19世紀には最高潮に達しましたが、ソビエト連邦の成立後に民間貿易が制限され、急速に衰退しました。

アイデンティティと現在の状況

ソビエト連邦が崩壊した後、ポモールに関する見解は二分されています。ポモールをロシア人の一部と見るか、ロシア北部の先住民と捉えるかの議論があります。ポモールは自らの祖先がノヴゴロドからの入植者だけではなく、独自の文化と伝統を持つ民族であると主張しており、今日までアイデンティティを保っています。2002年の国勢調査では、6,571人がポモールを名乗り、2010年にはその数が3,113人に減少しました。

ポモールは主にロシア正教の信者であり、またポモーリエ派と呼ばれる信徒も存在します。現在、ロシアでは人口の少ない地域が合併される中で、アルハンゲリスク州とムルマンスク州、ネネツ自治管区の合併案も進められています。その際、合併後の州名に「ポモール州」が候補として浮上する可能性があります。

まとめ

ポモールは独自の文化と歴史を持ち、古くからの生活様式が息づいています。彼らのアイデンティティの形成と発展は、周囲の民族との共生を反映したものでもあり、その社会的・経済的な活動は今もなお重要な要素として存在しています。

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