ケーブル・アンド・ワイヤレス

ケーブル・アンド・ワイヤレス（Cable & Wireless）の歴史

ケーブル・アンド・ワイヤレス（C&W）は、1934年から2010年にかけて、海底ケーブルを主軸に世界80カ国で事業を展開した電気通信事業者です。そのルーツは19世紀にまで遡り、ジョン・ペンダーによって設立されたイースタン・テレグラフ・カンパニー（大東電信会社）に始まります。C&Wは、国際的な通信網の構築において重要な役割を果たし、その歴史は技術革新、国際関係、そして経済の変遷と密接に結びついています。

ペンダー帝国の誕生

C&Wの創業者であるジョン・ペンダーは、1852年にブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・マグネティック（BIM）という電信会社に資本を投じ、ロンドンとダブリン間の電信事業を開始しました。これがC&Wの原点です。その後、大西洋横断電信ケーブルの敷設に乗り出しますが、経営難に陥り、ケーブルメーカーの合併を仲介してテルコン（Telegraph Construction and Maintenance Company）を設立します。

しかし、テルコンもケーブル敷設の失敗で破綻。ペンダーは新たにアングロ・アメリカン電信会社を設立し、テルコンを再建させ、1866年には大西洋間ケーブルの敷設に成功します。1870年には大北電信会社と勢力圏を協定し、1872年にはペンダーを会長としてイースタン・テレグラフ・カンパニーに統合。ペンダーの支配下にある海底ケーブル網は、ポースカーノからボンベイまで広がりました。

太平洋への進出

ペンダーの死後、C&Wは太平洋方面にも事業を拡大します。1902年には、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの四カ国政府が出資し、太平洋ケーブルが竣工。さらに、サンフランシスコとハワイを結ぶ太平洋横断電信ケーブルも敷設し、1905年には日本政府と共同で日米間の国際海底ケーブルを開通させました。

世界通信戦争と国営化

第一次世界大戦中は、C&Wの海外ケーブルは英国政府に管理され、ドイツとの通信を遮断するために利用されました。その後、世界恐慌やテレックスの発明、アメリカのITTとの競争を経て、1934年にIICからケーブル・アンド・ワイヤレスへと社名を変更しました。

第二次世界大戦中には、ドイツやイタリアの海底ケーブルを切断し、連合国側の通信網を確保。英国政府とは自社株を譲るほどの関係を築き、代わりに短波無線の特許を得ました。また、監視計画を開始し、世界の通信を監視下に置きました。

1945年、C&Wは国有化され、イギリス国内の施設は郵政庁に吸収されましたが、海外のケーブル網はC&Wの手元に残りました。

民営化と分割

1980年代に入ると、マーガレット・サッチャー政権の民営化政策により、C&Wは民営化されました。その後、マーキュリー・コミュニケーションズを設立し、BTグループと競合。しかし、競争激化と経営難から、2010年にケーブル&ワイヤレス・コミュニケーションズとケーブル&ワイヤレス・ワールドワイドに分社化されました。後者は2012年にボーダフォンに買収され、C&Wの歴史は一旦幕を閉じました。

その後の展開

C&Wの分割後、それぞれの事業は再編を重ねます。CWCは2013年にマカオ事業を売却し、2014年にはモナコテレコムを売却。2015年にはリバティ・グローバルに買収されました。このように、C&Wは時代とともに変化を続け、その事業は複数の企業に引き継がれていきました。

C&Wの名称の変遷と子会社

C&Wの歴史を通じて、その名称は幾度となく変化しました。以下にその主な変遷と子会社を列挙します。

British and Irish Magnetic (BIM、1857)
Atlantic Telegraph Company (大西洋電信会社、1856 - 1868)
Telegraph Construction and Maintenance Company (1864)
Anglo-American Telegraph Company (1865)
Eastern Telegraph Company (大東、1872)
Eastern and South African Telegraph Company (1879)
African Direct Telegraph Company (1885)
West African Telegraph Company (1885)
Western Telegraph Company (西部電信、1899)
Commercial Pacific Cable Company（商業太平洋ケーブル会社、1901）
Imperial and International Communications（IIC、1929）
Cable and Wireless (1934)

まとめ

ケーブル・アンド・ワイヤレスは、海底ケーブル技術の発展とともに世界規模で通信網を構築した先駆的な企業でした。その歴史は、技術革新、国際的な政治・経済情勢の変化、そして企業の盛衰を物語っています。C&Wが築いた通信インフラは、今日のグローバルな情報社会の礎となっています。

関連項目

ハチソン・ワンポア
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン

外部リンク

* Cable & Wireless （英語）

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