ケープタウン大学

ケープタウン大学：歴史と変革を歩むアフリカの名門

ケープタウン大学（University of Cape Town、UCT）は、南アフリカ共和国の西ケープ州ケープタウンに位置する公立研究大学です。1829年にサウス・アフリカン・カレッジとして創設され、南アフリカ最古の高等教育機関としての歴史を誇ります。1918年には、ステレンボッシュ大学とともに正式な大学として認可され、サハラ以南のアフリカで最も古い大学の一つとなりました。

ケープタウン大学は、QS世界大学ランキング、THE世界大学ランキング、世界大学学術ランキングといった国際的な評価において、常にアフリカの大学でトップクラスの地位を占めています。特に法学部、商[[学部]]、医学部は、世界的に見ても常に上位100位以内にランクインする高い評価を得ています。また、世界経済フォーラムが発足させた世界のトップ26大学によるGlobal University Leaders Forum (GULF) に、アフリカから唯一メンバーとして参加しています。ケープタウン大学の教授言語は英語です。

歴史

ケープタウン大学は、1829年に男子高等学校であるサウス・アフリカン・カレッジとして設立されました。当初は小規模な高等教育機関が付属していましたが、1880年以降に南アフリカ北部で金とダイヤモンドが発見されたことをきっかけに、鉱業技術への需要が高まり、大学の発展に必要な財政支援が得られるようになりました。これにより、大学は急速に成長し、1880年から1900年代にかけて大学としての体裁が整えられました。

この時期には、最初の研究室が設置され、鉱物学科と地質学科が開設されました。また、女性への入学許可も重要な出来事でした。1886年には化学教授の Paul Daniel Hahn が大学当局を説得し、自身の授業に4人の女性を試験的に参加させました。彼女たちの優れた成績が認められ、1887年には女子学生の恒常的な受け入れが決定されました。

1902年から1918年にかけて、メディカル・スクールや工学課程、教育学科が導入されました。そして1918年、鉱山王 Alfred Beit の遺贈や他の資本家からの寄付を基に、ケープタウン大学は正式に大学として認められました。1928年には、セシル・ローズの遺贈によって得たDevil's Peakの麓のGroote Schuurに移転し、創立100周年を迎えた1929年には現在のキャンパスの基礎が築かれました。

その後、ケープタウン大学は研究と教育における一流大学へと発展しましたが、1960年から1990年の間には、「丘の上のモスクワ」という別名で呼ばれることもありました。これは、アパルトヘイト、特に高等教育における人種差別に対して大学が積極的に反対してきたからです。1920年代から少数の黒人学生を受け入れていましたが、1980年代から1990年代には黒人学生の数が増加し、大学は内部改革を進め、多様性を受け入れるようになりました。現在では学生の半数近くが黒人であり、男女比もほぼ半々で、南アフリカでも有数の多様性を誇る大学となっています。

キャンパス

ケープタウン大学の主要キャンパスは、Devil's Peakの麓のRhodes EstateにあるUpper Campusです。このキャンパスには、理学部、工学部、商[[学部]]、文学部、学生寮などがあります。キャンパスの中心には、卒業式や試験に使われるMemorial Hallがあります。1928年から1930年にかけて建てられた最初の校舎は建築家JM Solomonによって設計されました。

Upper Campusに隣接し、運動場と高速道路を挟んだ場所には、Middle CampusとLower Campusがあります。これら二つのキャンパスには、法学部、音楽科、経済学科、学生寮、大学事務局、スポーツ施設などがあります。また、最新式の人工芝サッカー場は、FIFAによってワールドカップ代表の練習場として承認されています。これら3つのキャンパスは、しばしば「メインキャンパス」と呼ばれます。

健康科[[学部]]は、郊外のObservatory地区にあるGroote Schuur Hospitalに隣接するメディカル・スクール・キャンパスに位置しています。美術科と演劇科は、市中心部のHiddingh Campusにあり、その一部はエジプト復興様式で建てられています。また、米国バージニア州リッチモンドにもメディカル・カレッジ・オブ・バージニアがあります。商科大学院は、市内Victoria & Alfred WaterfrontのBreakwater Lodge Campusにあります。これらのキャンパスは、セシル・ローズが寄贈した広大な土地を基盤としており、彼の貢献を称える銅像がかつてはラグビー場を見下ろしていました。しかし、2015年に学生団体からの圧力により撤去されました。

組織

ケープタウン大学は、1918年の私法によって公立大学として設立され、現在は1997年の高等教育法に基づいて組織されています。名目上の長である学長（Chancellor）は儀礼的な役割を担い、実質的な長は大学の運営と行政に責任を持つ副学長（Vice-Chancellor, VC）です。副学長を補佐する複数の副学長代理（Deputy Vice-Chancellors, DVCs）がおり、学籍係（Registrar）が行政と法務を担当します。

大学は、文学部、法学部、商[[学部]]、理学部、工学・構築環境学部、健康科[[学部]]の6つの学部で構成されています。また、学際的な研究機関として高等教育発展センター（Center for Higher Education Development）があります。商科大学院は、商[[学部]]の一部として独立して運営されており、独自のDeanとDirectorがいます。

各学部は多様な学科で構成されており、例えば、文学部には英語・英文学科、哲学科、心理学科、歴史学科などがあります。商[[学部]]には経済学科、経営学科、会計学科などが含まれます。理学部には数学科、計算機科学科、物理学科、化学科などがあり、工学部には機械工学科、電子工学科、化学工学科などが設置されています。健康科[[学部]]には、医学科、病理学科、精神医学科、外科学科などがあります。

学生と教職員

2016年現在、ケープタウン大学には29,074人の学生と4,542人の教職員が在籍しています。学生の男女比はほぼ50:50で、人種構成は南アフリカ国籍の白人が30.70％、南アフリカ国籍の非白人（黒人、カラード、インド系）が43.98％、外国籍が25.29％です。外国籍の学生は4,674人に及び、100か国以上の出身者がいます。教員は約1,179人で、そのうちの多くが博士号または修士号を持っています。大学は、人種構成を緩やかではあるが恒常的に変化させるための雇用均等計画を実施しています。

学生生活

ケープタウン大学には36の運動部があり、ラグビー部が特に有名です。スポーツチームは「Ikey Tigers」または「Ikeys」として知られています。また、80を超える学生団体があり、学術団体、政治団体、宗教団体、郷友会、その他多様な団体が存在します。学生たちは、学業だけでなく、社会貢献活動にも積極的に参加しています。特に大規模な学生組織として、SHAWCO、Ubunye、RAGなどが挙げられます。近年では、Green Campus Initiativeのような環境保護活動も活発に行われています。

国際連携と研究

ケープタウン大学は、世界大学ネットワーク（WUN）、アフリカ大学協会、国際研究型大学連合（IARU）など、多くの国際的な組織に加盟しています。また、5名のノーベル賞受賞者を輩出しており、ラルフ・バンチ（平和賞）、マックス・タイラー（生理学・医学賞）、アラン・コーマック（生理学・医学賞）、アーロン・クルーグ（化学賞）、J・M・クッツェー（文学賞）がいます。

数学・応用数学科は宇宙論と位相幾何学の研究拠点として知られ、修辞学研究センターはアフリカ大陸で唯一の修辞学研究機関です。物理学科はCERNの研究に参加しており、工学科は電波望遠鏡プロジェクトに関わっています。感染症・分子医療研究所は結核ワクチンやHIVワクチン候補の研究を行っています。また、OpenUCT Initiativeを通じて、研究、教育、教材をオンラインで公開しています。

課題と批判

ケープタウン大学は、セシル・ローズの銅像撤去をめぐる議論から、南アフリカの大学で広がった「Rhodes Must Fall」運動の中心地となり、国際的な注目を集めました。この運動は、大学における人種差別や植民地主義の遺産に対する抗議として始まり、学生運動「FeesMustFall」にも影響を与えました。

また、大学内の芸術作品に対する検閲や破壊も批判されています。学生たちは、歴史的な絵画を焼却し、大学は「攻撃される可能性のある」芸術作品を撤去・封印しました。一部の芸術家や学者は、大学の行動は表現の自由を侵害するものであり、芸術作品に対する不寛容を示していると批判しています。South African Human Rights Commissionは、この問題について調査を進めています。

ケープタウン大学は、南アフリカの高等教育をリードする存在として、その歴史と業績を誇る一方で、社会的な変革と課題に直面し続けています。

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