マックス・タイラー

マックス・タイラー：黄熱病ワクチン開発のパイオニア

マックス・タイラー（1899年 - 1972年）は、南アフリカ共和国出身のウイルス学者であり、黄熱病ワクチンの開発という、人類の健康史に輝く偉業を成し遂げた人物です。彼の功績により、かつては恐るべき脅威であった黄熱病は、現在では予防可能な病気となりました。1951年度のノーベル生理学・医学賞の受賞は、その業績を称えるにふさわしい栄誉と言えるでしょう。

生い立ちと初期の研究

タイラーは、南アフリカのプレトリアで獣医学者の父のもとに生まれました。プレトリア男子高校、ローズ大学を経てケープタウン大学医学部を卒業後、更なる研究を志し、イギリスへと渡ります。ロンドンのキングスカレッジロンドンとロンドン大学衛生熱帯医学大学院で熱帯医学と衛生学を学び、その後はハーバード大学熱帯医学部へと籍を移しました。

ハーバード大学では、アメーバ性赤痢や鼠咬症の研究に従事する傍ら、アンドリュー・セラーズの下で黄熱病の研究にも携わります。当時、黄熱病の原因をめぐっては、野口英世らによる細菌説が有力視されていましたが、タイラーとセラーズは異を唱えました。そして、1928年、黄熱病の原因がウイルスであることが明らかになり、タイラーはアフリカと南米の黄熱ウイルスが、インドのアカゲザルから単離されたウイルスとは免疫学的に異なることを示しました。この研究中に自身も黄熱病に感染するも、奇跡的に回復し、免疫を獲得しました。

黄熱病ワクチンの開発とノーベル賞受賞

1930年、タイラーはニューヨークのロックフェラー財団に移り、ウイルス研究所の責任者として研究を続けました。そこで彼は、弱毒化した黄熱ウイルスがアカゲザルに免疫を与えることを発見。この重要な発見を基に、彼は黄熱病ワクチンの開発に成功します。1937年には、共同研究者のヒュー・スミスと共に研究成果を発表。西アフリカ由来の毒性の強いAsibi株を元に開発された17-Dワクチンは、世界中で広く使用され、黄熱病の蔓延を防ぐ上で重要な役割を果たしました。

ロックフェラー財団は、1940年から1947年にかけて2800万回分以上のワクチンを生産。その結果、黄熱病はかつての脅威ではなくなり、世界中の多くの人々の命を救いました。タイラーの偉大な業績は、1951年度のノーベル生理学・医学賞受賞という形で高く評価されました。

タイラーの功績とその後

マックス・タイラーは、アメリカ合衆国に帰化することなく、1972年にコネチカット州で亡くなりました。しかし彼の業績は、後世に大きな影響を与え続けています。黄熱病ワクチンは現在も世界中で使用されており、彼の研究は、ウイルス学、ワクチン開発、そして感染症対策の進歩に多大な貢献を果たしました。彼は、単なる研究者ではなく、人類の健康を守るために尽力した真の科学者であったと言えるでしょう。彼の功績は、未来の医学研究者たちにとって、常に大きなインスピレーションを与え続けることでしょう。

家族と受賞歴

1928年に結婚し、娘が一人いました。受賞歴としては、Chalmer’s Medal（Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene、1939年）、Flattery Medal（ハーバード大学、1945年）、ラスカー賞（1949年）、そしてノーベル生理学・医学賞（1951年）などがあります。

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