ゲイタイム

ゲイタイム：女王陛下の愛馬から日本ダービーの英雄へ

ゲイタイムは、イギリスで生まれ育ったサラブレッド競走馬です。華麗なる競走馬としてのキャリアと、日本競馬の歴史に名を刻んだ種牡馬としての成功は、多くの競馬ファンの記憶に深く刻まれています。

競走馬時代：惜しくも届かなかったダービー制覇

ゲイタイムは、イギリスの名門ドルイドロッジ厩舎でノエル・キャノン調教師の指導の下、競走生活を送りました。キャノン調教師は、のちに伝説的騎手となるレスター・ピゴットの従兄弟であり、名門ジョッキー一族の血を受け継いでいました。

2歳から活躍を始め、リッチモンドステークス、ソラリオステークス、ゴードンステークスなど、数々の重賞競走で勝利を収めます。そして迎えた1952年のダービー。当時、まだ16歳だった若きピゴット騎手とのコンビで挑んだレースは、多くの競馬ファンにとって忘れられないものとなりました。

ゲイタイムはレース中盤、不利な展開に見舞われながらも、最後の直線で鋭い脚を見せ、圧倒的な人気を誇ったタルヤーに迫ります。しかし、ゴール寸前でタルヤーの斜行により、わずかに及ばず2着に終わりました。ピゴット騎手はタルヤーの進路妨害を主張しましたが、落馬事故の影響で異議申し立ての機会を逸してしまい、結果は覆りませんでした。

このダービーでの活躍が評価され、ゲイタイムはエリザベス女王の所有馬となります。女王の所有馬として、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス2着、セントレジャーステークス5着など、引き続き活躍を見せました。

種牡馬時代：日本競馬に多大な貢献

競走馬を引退したゲイタイムは、喉の疾患によりイギリスでの種牡馬入りが叶わず、日本へ輸出されます。この輸出にはイギリス議会でも議論がなされており、日本の競馬界への期待の高さが伺えます。

1954年から日本で供用されたゲイタイムは、数々の活躍馬を輩出しました。特に注目すべきは、1962年のフエアーウインと1963年のメイズイによる2年連続日本ダービー制覇です。メイズイは、2400メートル以下のレースでは圧倒的な強さを誇りました。

ゲイタイム産駒は中距離を得意とする馬が多く、天皇賞や菊花賞といった長距離レースでの勝利は少なかったものの、日本の競馬界に大きな影響を与えました。

しかし、ゲイタイムの父系は3代で断絶してしまいました。一方で、母の父として活躍した馬も多く、有馬記念優勝馬ヒカリデユールや三冠馬ミスターシービーの血統にもその名を見つけることができます。ゲイタイムの血は、現在でも日本の競馬界に脈々と受け継がれているのです。

幻のダービーと日本の成功

ゲイタイムのダービーでの2着は、永遠の"もしも"として語り継がれています。もし、あの時、異議申し立てが間に合っていたら、歴史はどのように変わっていたのでしょうか。しかし、その悔しさは、日本で種牡馬として大成功を収めたゲイタイムの輝かしい功績によって、ある意味で払拭されたのかもしれません。

ゲイタイムの物語は、競走馬としての挫折と種牡馬としての成功、そして国際交流の歴史を刻む物語です。そのドラマチックな生涯は、これからも競馬ファンを魅了し続けるでしょう。

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