Sバンド

Sバンド（S帯）とは

Sバンドは、マイクロ波の中でも2GHzから4GHzの周波数帯域を指す名称です。この周波数範囲は、波長にすると75mmから150mmの範囲にあたり、電波の分類としては極超短波（UHF）からセンチメートル波（SHF）に相当します。Sバンドは、様々な無線通信やレーダーシステムで広く使用されており、現代社会において不可欠な周波数帯の一つです。

歴史的背景

Sバンドという名称は、第二次世界大戦中の技術革新に伴い、電波の周波数帯域を区分するために設定されました。当初は1.5GHzから5GHzの範囲を指していましたが、その後、IEEE（米国電気電子学会）によって体系的に整理され、現在の2GHzから4GHzの範囲に定義されました。名称の由来は、波長が比較的短い（Short）ことに由来するとされています。

Sバンドの主な利用

Sバンドは、その周波数特性から多岐にわたる用途で利用されています。以下に主な利用例を挙げます。

レーダー

Sバンドは、精密な観測が可能なため、レーダーシステムに広く利用されています。具体的には、以下のようなレーダーがSバンドを使用しています。

AN/SPY-1|AN_SPY-1: イージス艦に搭載されている多機能レーダーで、目標の捕捉、追跡、ミサイルの誘導などを行います。
対砲レーダ装置 JTPS-P16: 敵の砲弾の発射位置を特定するためのレーダーで、味方部隊の安全確保に貢献します。
富士山レーダー（廃止）： かつて気象観測に使用されていたレーダーで、2.88GHzの周波数を使用していました。
室戸レーダー（初代）： 同じく気象観測に使用されていたレーダーで、初期の気象レーダーとして重要な役割を果たしました。
航空機電波高度計: 航空機の高度を正確に測定するためのレーダーで、安全な飛行に不可欠です。

通信

Sバンドは、衛星通信や無線通信にも利用されています。

ワイドスター: 衛星電話サービスで、遠隔地との通信を可能にします。

放送

Sバンドは、かつてモバイル放送サービスにも利用されていました。

モバHO!（廃止）： 携帯端末向けの衛星デジタル放送サービスで、Sバンドを使用していました。

産業・科学・医療

特に、2.4GHzから2.5GHzの帯域はISM（産業・科学・医療）バンドとして広く利用されています。この帯域は、免許がなくても使用できるため、様々な機器に採用されています。

工業用マイクロ波加熱装置: 食品加工や材料加工に利用される加熱装置です。
電子レンジ: 家庭で広く使用されている加熱調理器で、2.45GHzの周波数を使用しています。
Bluetooth: 近距離無線通信規格で、スマートフォンやパソコン周辺機器の接続に利用されています。
無線LAN（IEEE 802.11b/g/n）： 家庭やオフィスでインターネット接続に利用される無線通信規格です。
デジタルコードレス電話: 家庭用のコードレス電話に利用されています。
RFID: 物流や在庫管理などに利用される無線識別技術です。
電気メス: 手術に使用される医療機器です。
* MRI: 医療診断に使用される画像診断装置です。

Sバンドの特徴

Sバンドは、波長が比較的短いため、より小型のアンテナで高い指向性を得ることができます。また、電波の減衰が比較的少ないため、ある程度の距離までの通信やレーダー観測に適しています。さらに、ISMバンドとして利用できる2.4GHz帯は、免許不要で様々な機器に組み込むことができるため、普及が進んでいます。

まとめ

Sバンドは、レーダー、通信、放送、産業・科学・医療など、幅広い分野で利用されている重要な周波数帯です。特に2.4GHz帯は、ISMバンドとして広く普及しており、私たちの生活に欠かせない技術を支えています。Sバンドの理解は、現代社会の無線通信技術を理解する上で不可欠です。

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