コア (樹木)

コア (Acacia koa)

概要

コアは、ハワイ諸島の固有種で、マメ科ネムノキ亜科に属する大木です。かつてはアウトリガーカヌーの製造に用いられ、その木材は今なお木工芸や楽器、特にウクレレやエレクトリック・ギターに人気があります。名前の「コア」は、ハワイ語で「勇気や戦士」を意味しており、木材は特に文化的な価値が高いとされています。生育条件によっては、独特の美しい杢が表れることもあります。

形態・生態

コアは急速に成長し、樹高は数年で約10メートルに達します。成熟した木は、広がる捻れた枝を持ち、支える生態系にも大きく寄与しています。この樹木は、鳥や昆虫に食料や住処を提供し、古い樹皮は地衣類の成長に寄与し、根元では窒素固定細菌が共生しています。そのため、痩せた土壌でもよく育つことができます。
葉の形は、若木と成木で異なります。若木の葉は小さく銀色がかった緑色をしているのに対し、成木の葉は長さ20センチメートルほどの三日月型で、葉柄が平たくなった偽葉です。このような柔軟性は、日陰から日向へと環境に適応して成長するのに有利です。また、春には小さな黄色い花を咲かせ、これに続いておよそ20センチメートルの長さの莢（豆果）ができ、内部には茶色の種子が入っています。これらの種子は、鳥によって運ばれることが多いです。

生態系と遺伝の背景

コアに非常に似た植物に、インド洋のレユニオン島に自生するアカキア・ヘテロフィルラが存在します。この植物は遺伝子分析から、約140万年前にコアの祖先が鳥によって運ばれた結果生まれたことが示されています。この特異な伝搬の例は、既知の種子の撒布距離としては最長となっています。

歴史と環境への影響

コアは150万年前にオーストラリアから進化した木であり、ハワイの自然環境に適した独特の特性を持っています。ハワイ諸島には人間が住むまで、コウモリ以外の哺乳類がいなかったため、食害の恐れはありませんでした。このため、敵からの防御策を進化させる必要もなく、特有の生態系が保たれていました。

しかし、19世紀以降、アメリカからの入植者によってコアの生息環境は大きく悪化しました。原生林の伐採や家畜による食害、外来植物の侵入が影響を及ぼしました。現代では、コアの伐採は厳しく制限されており、流通量は非常に少なく、世界でも高価な木材の一つとして取り扱われています。

またコアは、ハワイ文化において重要な存在であり、ハワイ王国時代には高級材としてカヌーや武器、建物などに幅広く使用されました。現在でも、コア材が使われた歴史的な建築物が存在し、その価値が再認識されています。

現在、ハワイ州政府はコアの保護に努めており、植樹活動や持続可能な利用を進める企業が増えています。これにより、コアの未来が守られ、次世代にその価値が伝承されることが期待されています。

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