コアラ

コアラ（Koala, Phascolarctos cinereus）

コアラは、オーストラリアの東部に生息する有袋類で、コアラ科に属する唯一の種です。日本語では「子守熊」または「袋熊」とも呼ばれ、特にユーカリの葉を主食とすることが知られています。その特徴的な体形や生活様式から、多くの人々に愛されています。近年、環境の変化や病気の影響で数が減少しており、保護に向けた取り組みが進められています。

コアラの分布と生息地

コアラはオーストラリアのクイーンズランド州南東部、ニューサウスウェールズ州東部、ビクトリア州、南オーストラリア州南東部に広がっています。西オーストラリア州やタスマニア州には生息しておらず、熱帯雨林や温帯のユーカリ林、疎林を好みます。特に、肥沃な土地で、タンニンや油が少ないユーカリの生える場所を好みます。

また、コアラは一般的に単独で生活し、繁殖期にはオスとメスが一緒に過ごします。しかし、群れを作ることはほとんどありません。ヨーロッパ人の来襲以降、コアラの生息域は急激に減少し、1930年代までに初期の50%以下にまで達しています。

形態の特徴

コアラの体長は地域によって異なりますが、クイーンズランド州に生息するオスは体長674〜736ミリメートル、体重4.2〜9.1キログラムです。一方、南部の亜種ではオスが750〜820ミリメートル、体重は9.5〜14.9キログラムにも達します。コアラは外見上、背面は灰色、腹面は白色の毛を持ち、地理的要因により毛色や大きさに違いがあります。また、オスはメスよりも体重が最大50%重いです。

コアラには特異な生態的適応も見られ、特に樹上生活に適しています。前足には2本の指が反対向きで、木の枝をつかむのに特化しており、後足も同様に癒合した指を持っています。さらに、コアラは4足歩行が可能ですが、非常に多くの時間を樹上で過ごしたり、熟睡することが知られています。

食性と生活習慣

コアラの主食はユーカリの葉で、毎日500グラムから1キログラム以上食べます。オーストラリアには多くのユーカリが存在しますが、実際に食べる種類は限られています。コアラは食べる前に葉を嗅ぎ、好みの葉を選別します。ユーカリの葉は消化が難しいため、コアラはおおよそ18〜20時間を睡眠に費やし、エネルギーを節約しています。

繁殖方法

コアラの繁殖は胎生であり、通常は1年に1度の出産が一般的です。妊娠期間は約34〜36日で、出生時の新生児は非常に小さく、体重はわずか0.5グラムほどです。子供は約6〜7か月育児嚢の中で育てられ、その後、徐々に外に顔を出し、母親からパップと呼ばれる離乳食を与えられます。

絶滅危惧と保護活動

近年、コアラは様々な危機に直面しており、生息地の破壊や病気、さらには森林火災などが影響を与えています。特にクラミジア感染が広がっており、繁殖率の低下や視力の喪失を引き起こしています。そのため、オーストラリアでは再導入や保護活動が行われており、生息環境の改善が求められています。

人とコアラの関係

コアラはオーストラリアの重要なシンボルの一つであり、観光名所としても知られています。ヨーロッパ人によって彼らの毛皮が狙われた歴史もありましたが、現在ではコアラ保護の重要性が広く認識されています。彼らの存在がオーストラリアの生態系にどのように寄与しているのかを理解し、保護活動に参加することが求められています。

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