コクサギ

コクサギ(小臭木)



概要



コクサギ(学名: Orixa japonica)は、ミカン科コクサギ属に分類される落性の低木です。雌雄異株であり、特有の臭気を放つことが特徴です。

名前について



和名の「コクサギ」は、からクサギ(臭木)に似た臭いがすること、そしてクサギよりも小型であることに由来します。学名Orixaは、日本名の「コクサギ」を、スウェーデン植物学者カール・ツンベルクが誤って「ヲリサギ」と読んだことに由来します。

植物学者の倉田悟は、コクサギの和名について、クサギとの関連性を指摘しつつも、緑肥としての利用に着目し、「緑肥にする木」という意味ではないかと考察しています。また、養蚕の際に害虫を防ぐためにコクサギのを敷物として利用した地域では、「蚕糞」を意味する「コクソ」という名前で呼ばれていたという説も紹介しています。

分布と生育環境



コクサギは、日本、朝鮮半島南部、中国大陸の中南部から東南部に分布しています。日本では、本州四国九州に自生し、低地から低山地の湿った林内や沢沿いを好みます。特に石灰岩地では大群生が見られることがあります。

特徴



樹木の特徴



コクサギは、高さ1.5~3mほどに成長する落樹の低木です。よく分かれし、樹皮は灰白色または灰褐色で、古くなると薄く剥がれます。一年目の若いは灰緑色や淡紫色で、白い軟毛が2列に並んでいます。

の特徴



は互生しますが、先の若では2個ずつ左右交互につく「コクサギ型序」という特殊なつき方をします。身は倒卵形、倒卵状長楕円形、または菱形状卵形で、長さ6~10cm、幅3~7cmです。の表面は光沢があり、脈上に短毛が散生し、裏面には全面に毛が生えています。柄は2~7mmで軟毛があります。

の特徴



時期は春から晩春(4~5月)で、が開くと同時に黄緑色のを咲かせます。雄は長さ2~4cmの総状[[花序]]で、10数個のをつけます。雌は長さ3~5mmの柄の先に1個つきます。雄には4個の雄しべがあり、雌には4個の退化した雄しべと1個の雌しべがあります。

果実の特徴



果実は4つの分果が集まってつき、長さ8~10mmのゆがんだ楕円形をしています。秋に熟すと淡褐色になり、乾燥した内果皮がバネのように反転して種子を弾き出します。種子は直径約3mmの平たい円形で、黒色で光沢があります。

冬芽の特徴



冬芽は側芽が2個ずつ互生し、長楕円形または卵形をしています。芽鱗は紅紫色で白っぽく縁取られています。先の頂芽は側芽よりも大きいです。痕は半円形で、維管束痕が弧状に1個見えます。

利用



コクサギは、かつてはや若堆肥として利用し、麦や陸稲などの肥料に使われていました。また、殺虫効果があるため、を煎じた汁は便所の殺しや家畜のシラミ殺しに使われていました。しかし、手で摘み取ると、人によっては皮膚がかぶれることもあったようです。

地方名



コクサギは、その特徴や利用方法から、地域によって様々な名前で呼ばれています。例として、サワウルシ(千県)、ウジコロシ(青森県・宮城県・群馬県)、ウマアライノキ(岐阜県)などがあります。他にも、センズイ(紀伊半島)、タイサギ(高知県)、トウミョウ(兵庫県・岡山県)など、多くの地方名が存在します。これらの地方名は、コクサギが人々の生活に密接に関わってきた証拠と言えるでしょう。

コクサギ属



コクサギ属は、ミカン科に属する単型の属で、コクサギ1種のみが含まれます。

脚注



(参考文献一覧は省略)

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