コケコゴメグサ

コケコゴメグサ（苔小米草）

コケコゴメグサ（学名：Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba）は、日本の高山に生息する一年草で、ハマウツボ科の一種です。この植物は、高橋秀男によって1978年に新種として発表されました。コケコゴメグサは、著しい半寄生性を持ち、他の植物に依存しながら生育する独特の生態を持っています。

特徴

コケコゴメグサは、一般的に2～6cmと非常に小型の草で、特徴的な茎を持っています。この茎には、下向きの屈毛とやや開出する腺毛が存在し、個体によっては分枝しないことが多いです。葉は長さ3-5mm、幅2.5-4.5mmの広倒卵形で、細毛と腺毛に覆われています。葉の際には1対（まれに2対）の牙歯が見られ、苞は多肉質で、密集して重なり合ってつきます。

花冠は白色に紫色の筋がある美しい見た目をしており、長さは3.5～5.5mmです。花柱はやや太く、約4mmの長さを持ち、先端は著しく湾曲しています。下唇の中裂片には黄色の斑点があり、葯の長さは0.8～1mmに達します。花期は、毎年7月下旬から8月中旬にかけて、気候に応じて観察されます。

分布と生育環境

コケコゴメグサは日本固有の植物で、本州の木曽山脈に自生しています。特に、将棊頭山や濃ヶ池付近、伊那前岳、木曽駒ヶ岳、中岳、極楽平、檜尾岳、空木岳などに点在しています。総じて個体数は少ないものの、木曽山脈の主要部に広く分布しています。特記すべきは、木曽駒ヶ岳がこの植物の基準標本として知られていることです。

主に高山帯の乾燥した草地や風の強い岩場に生育し、特にヒメウスユキソウ（コマウスユキソウ）と共に生息します。

コバノコゴメグサとの識別

同じミヤマコゴメグサ群に属するコバノコゴメグサとの違いは明確です。コバノコゴメグサは花柱が直立しているのに対し、本種の花柱は上半分が下向きに湾曲します。それに加えて、茎や萼に見られる腺毛の有無や、萼の深裂の形状と裂片の先が尖るかどうかも識別ポイントになります。

保全状況評価

コケコゴメグサの個体数は少なく、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類に指定されています。一部の地域では絶滅危惧IB類にも指定されており、保護の必要が高いとされる植物です。


古くから高山植物の一部として認知され、多くの研究によりその重要性が認識されています。魅力的で希少なこの植物を未来に残すため、私たちの理解と保護が欠かせません。

参考文献

• - 小野幹雄、林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館.
• - 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社.
• - 清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』（増補改訂新版）山と溪谷社.
• - 高橋秀男「木曽山脈産コゴメグサ属の1新種」『植物研究雑誌』.
• - 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社.

高山の厳しい環境で生き残るコケコゴメグサの姿を目の当たりにすることで、自然の力強さを感じることができるのです。

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