コジモ・イル・ヴェッキオの肖像

コジモ・イル・ヴェッキオの肖像

ヤコポ・ダ・ポントルモによって1519年から1520年頃に制作された油彩の肖像画です。板に描かれており、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

作品の背景

この肖像画は、メディチ家の始祖であるコジモ・イル・ヴェッキオをモデルとしています。コジモは既に50年以上前に亡くなっていましたが、その偉業を称え、メディチ家の復興を願う人々の思いが込められています。依頼主は、フィレンツェの行政責任者であったゴーロ・ゴーリで、後に教皇レオ10世となるジョヴァンニ・デ・メディチの要請があったとも考えられています。

ゴーリは、ロレンツォ2世・デ・メディチの秘書を務めていましたが、ロレンツォの死後、メディチ家の正統な血筋は一時途絶えていました。しかし、ポポラーノ系のジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレとマリア・サルヴィアティの間に息子コジモが誕生し、メディチ家の家運は再び隆盛に向かうことになります。

この作品は、ポントルモがメディチ家の一員として認められるきっかけとなりました。肖像画は、1465年以降に鋳造されたコジモのブロンズメダルと同様に、横顔で描かれています。赤いベルベットのケープと帽子は、メディチ家の守護聖人である聖コスマスと聖ダミアヌスを描く際に用いられる典型的な表現です。

コジモが座る椅子には、3つの「P」が象られています。これは「Pater Patriae Parens（祖国の父、創立者）」を意味し、古代ローマの著名人キケロになぞらえられたコジモを表現しています。左側には、メディチ家の血脈の継続を象徴する月桂樹の枝と、巻物が描かれています。巻物には、「折れた1本の枝により、もう1本が弱ることはない」という言葉が記されており、これは、アエネーイスの血脈の継続とローマ建国を予言した『アエネーイス』の一節から引用されています。これらの要素は、本作がコジモ1世の誕生を祝して委嘱されたという説を強く裏付けています。

作品の変遷

この絵画は、当初オッタヴィアーノ・デ・メディチのコレクションにあり、後にその息子であるアレッサンドロへと受け継がれました。委嘱後、オッタヴィアーノはポントルモにポッジオ・ア・カイアーノの別荘の大広間フレスコ画の制作を依頼しています。1585年には、アレッサンドロ・ピエローニによってウフィツィ美術館のために複製が制作され、アーニョロ・ブロンズィーノも、ヴァザーリの回廊にあるメディチ家の肖像画ギャラリーのために本作の顔部分のみの複製を制作しました。

参考文献

ルチアーノ・ベルティ、アンナ・マリーア・ペトリオーリ・トファニ、カテリーナ・カネヴァ『ウフィツィ美術館』、みすず書房、1994年　ISBN 4-622-02709-7

外部リンク

ウフィツィ美術館公式サイト、ヤコポ・ダ・ポントルモ『コジモ・イル・ヴェッキオの肖像』 (英語)

もう一度検索