コスモス398号

コスモス398号 (Kosmos 398)

コスモス398号は、1971年2月26日にソビエト連邦によって実施された、月着陸船LKの無人試験飛行ミッションです。ソ連が進めていた有人月面着陸計画、通称N1-L3計画において、月面への降下、着陸、そして月面からの離陸を担う重要な役割を担うはずだった月着陸船LKの、技術的な信頼性を検証するために行われた一連の無人試験飛行の第2弾にあたります。

ミッションの背景と目的

ソ連の有人月計画は、アメリカのアポロ計画と競合する形で進められていました。この計画では、巨大ロケットN1で打ち上げられたL3複合体（月軌道船LOKと月着陸船LKから構成）が月周回軌道に到達し、LOKに残る宇宙飛行士1名を残して、残りの1名がLKに乗り移り月面へ降下するというシナリオが想定されていました。月面での活動後、飛行士はLKの上昇段に乗って月周回軌道へ戻り、LOKとドッキングして地球へ帰還する計画でした。

月面という地球とは全く異なる環境下での正確な軌道制御やエンジン運用は、極めて高度な技術を要求されるため、有人飛行に先立って無人での徹底した試験が不可欠でした。コスモス398号は、1970年11月24日に成功した最初の無人試験機であるコスモス379号に続くもので、LK月着陸船の異なるバージョンである「T2K型」と呼ばれる機体を用いて実施されました。この試験の主な目的は、地球周回軌道上で、月面着陸や離陸、月軌道上でのマヌーバを模擬した複雑な軌道制御や、降下・上昇段エンジンの性能、姿勢制御システムの機能などを検証することにありました。

打上げと軌道

コスモス398号は、1971年2月26日、カザフスタン共和国に位置するバイコヌール宇宙基地の31番射点から打ち上げられました。使用された機体、LK月着陸船T2K型の質量は7255キログラムでした。機体は無人での運用となりました。

打上げ後、コスモス398号は地球周回低軌道に投入されました。具体的な軌道パラメータは以下の通りです。

軌道種類：地球周回軌道、低軌道
近点高度：196 km
遠点高度：276 km
軌道離心率：0.006043
軌道傾斜角：51.63度
軌道周期：88.9分

この軌道は、月周回軌道での運用や、そこからの降下・上昇といったLKの主要な動作を地球の重力環境下で模擬するために設定されたと考えられています。比較的低い高度と特定の軌道傾斜角は、試験の内容に合わせて慎重に計算された結果です。

試験内容と意義

コスモス398号のミッション中、機体に搭載されたシステムは、設計通りの性能を発揮するかどうかが厳密に試験されました。これには、月面への軟着陸を可能にするための精密な降下エンジンの噴射シーケンスや、月面からの離陸・月周回軌道への再投入を担う上昇エンジンの試験が含まれていたと推測されます。また、機体の姿勢を正確に制御するためのリアクションコントロールシステムなども重要な試験対象でした。

前回のコスモス379号が月の周回軌道への投入・離脱、着陸・離陸といった一連のフェーズを地球軌道上で模擬したのに続き、コスモス398号ではT2K型の機体を用いたことで、何らかの改良点や新たなサブシステムの検証が行われた可能性があります。

コスモス398号による無人試験飛行は、LK月着陸船の開発における重要なステップでした。この試験で得られたデータは、機体の設計や運用手順の見直しに活用され、最終的な有人月着陸の実現に向けた技術的な課題の克服に貢献したと考えられます。このミッションに関する情報は、主にソ連の宇宙計画に関する資料、例えば「Mir Hardware Heritage (Wikisource)」のような公開情報源から確認することができます。

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