コトブス市電

ドイツ東部に位置する都市、コトブスにおいて公共交通の一翼を担うのが、コトブス市電（ドイツ語: Straßenbahn Cottbus）です。

概要

この路面電車網は、2022年現在、同じくバス事業を運営するコトブス交通有限会社（Cottbusverkehr GmbH）によって一体的に経営されています。

歴史

コトブス市内に軌道系公共交通機関を導入する構想は、19世紀の終わり頃から存在していました。1899年に発電所が建設されることが決まったのを契機に、そこで生み出される電力を活用した路面電車の敷設が進められることとなります。1901年には、ドイツのジーメンス・ウント・ハルスケ社とコトブス市の間で建設に関する正式な契約が締結され、その後工事が進められました。1903年までには建設が完了し、試運転を経て同年7月18日、3つの系統から成る路面電車が営業運転を開始しました。

開業後、1910年代には路線の延伸も行われ、路線網は拡大していきました。しかし、第一次世界大戦による人員不足や、戦後の激しいインフレーションの影響により、安定した営業が困難な状況に陥ります。その結果、1923年以降、路面電車は長期の運休を余儀なくされました。この期間には、路面電車の施設を撤去することも検討されたようですが、1925年までには無事営業運転が再開されました。

1930年代に入ると利用客数は再び増加傾向となり、第二次世界大戦中も多くの乗客を運びましたが、1945年の空襲による被害や、ドイツ降伏後の混乱により、同年以降は再び全線で運行を休止しました。戦後の復旧作業を経て、運転が再開されたのは1948年のことでした。

東ドイツ時代に入ると、コトブス市電はさらなる発展を遂げます。路線網の拡張が再度進められた他、終点にループ線を設けることで折り返し運転を効率化したり、信用乗車方式を導入したりするなど、運用の合理化が図られました。車両面では、1950年代以降は東ドイツ製の2軸単車が多数投入されましたが、1979年からはチェコスロバキア（現在のチェコ）のČKDタトラ社が製造した2車体連接車であるKT4Dが継続的に導入され、近代化が進みました。従来の2軸車は、ドイツ再統一後の1990年代には営業運転を終了しています。

ドイツ再統一に先立つ1990年、それまで人民公社として運営されていたコトブス市電の事業主体は、現在のコトブス交通へと組織変更されました。同事業者は、車両のバリアフリー化を含めた路面電車網の近代化を進めていますが、コトブス市の人口減少に伴う公共交通全体の利用者減が大きな課題として挙げられています。2009年には、路面電車自体の廃止を提案する報告書が市議会に提出される事態となりましたが、コトブス市民による強い反対運動が起こり、同年3月までにはこの廃止計画は撤回されました。

系統

2019年10月に実施されたダイヤ改正以降、コトブス市電では以下の系統が運行されています。
2号線
3号線
4号線
5号線
このうち、2号線、3号線、4号線については、深夜時間帯に同一経路を走行する深夜バス（それぞれ2N号線、3N号線、4N号線）が設定されています。また、土曜日・日曜日には、1号線に代わって路線バスのEV1号線が運行されています。

車両

現在、コトブス市電で営業運転に使用されているのは、21両のKTNF6形車両です。これは、東ドイツ時代の1979年以降に導入されたČKDタトラ製の連接車KT4Dを改造したものです。元の2車体連接構造の中間に、バリアフリーに対応した低床部分の車体が追加挿入されており、この改造は2004年までに完了しました。これにより、コトブス市電の全列車が低床構造を含むKTNF6形で運行されるようになっています。これらの車両は、2012年以降、延命のための更新工事も実施されています。

コトブス交通では、現役車両に加え、かつて使用されていた2軸単車などを動態保存しており、イベント時や貸切運行などで走行する姿を見ることができます。

今後導入予定の車両

コトブス交通は、既存の車両が老朽化し、予備部品の供給も不安定になっている状況を受け、他の路面電車事業者と共同で新型車両を導入することを2018年に決定しました。入札手続きを経て、2021年にはチェコのシュコダ・トランスポーテーション社が開発・製造する部分超低床電車、フォアシティ・プラス（ForCity Plus）を発注しました。コトブス市電向けにはシュコダ47Tと呼ばれる形式が22両導入される予定で、2024年6月より順次納入が開始されています。これらの新型車両は、2025年から営業運転を開始する見込みです。

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