コヒガン

コヒガン（小彼岸）とは

コヒガンは、バラ科サクラ属のサクラであり、早春に美しい花を咲かせることで知られています。このサクラには、広義と狭義の二つの意味があります。

広義のコヒガン

広義のコヒガンは、学名`Cerasus × subhirtella`で表される、マメザクラとエドヒガンの種間雑種の総称です。このグループには、狭義のコヒガンの他に、ジュウガツザクラ、シキザクラ、オモイガワ、クマガイ、ウジョウシダレなど、樹高5m程度の比較的小さな亜高木の栽培品種が多く含まれます。特にジュウガツザクラやシキザクラは、春と秋から冬にかけて二度咲く珍しい品種です。また、コバザクラ（フユザクラ）やコブクザクラも二季咲きとして知られています。

コシノヒガン（タカトオコヒガン）は、コヒガン系の中でも例外的に大きく育つ品種ですが、コヒガンを野生の種間雑種と捉える場合、その品種やエドヒガンの変種とみなされることもあります。ヤブザクラやホシザクラなどもコヒガンの品種として扱われることがあります。

これらの栽培品種は、それぞれに遺伝情報が異なる複数のクローンが存在し、同じ品種であってもクローンごとに特徴が異なる場合があります。これは、接ぎ木や挿し木だけでなく、他の個体と交雑した種子でも増殖されたため、形態が似た個体が別々の栽培品種として認識されなかったことが原因と考えられています。

狭義のコヒガン

狭義のコヒガンは、学名`Cerasus subhirtella (Miq.) Masam. et S.Suzuki 'Kohigan'`で表される特定の栽培品種を指します。中国名は「大葉旱櫻」です。この品種は、エドヒガンとマメザクラの雑種と推定されており、長野県伊那市の高遠城址の群生が有名です。

樹形は盃状で、樹高は亜高木であり、一般的には大木になりません。そのため、庭植えや切り花に適しています。樹皮は灰褐色で、サクラ類に見られる横長の皮目が多く、時に不規則に裂けることがあります。一年枝は灰色や淡灰褐色で、毛が生えています。

花期は3月から4月で、ソメイヨシノよりもやや早く咲きます。花は一重咲きで淡紅色をしており、ソメイヨシノよりも色が濃いのが特徴です。東京では3月中旬頃に開花し、春の彼岸頃に咲くことから、この名が付けられました。親種であるエドヒガンの特徴を受け継いでおり、彼岸頃に葉が展開する前に花が咲き、柄や葉に毛が多く、萼筒の根元が少し膨れるつぼ形である点は共通していますが、萼筒はエドヒガンより細いです。花が終わると小さい黒い実をつけ、秋には紅葉します。

冬芽は互生し、長卵形や楕円形で濃褐色をした鱗芽で、芽鱗は多数重なり毛が生えています。葉痕は半円形でやや膨らみ、維管束痕が3個あります。

その他の情報

別名として、ヒガンザクラ（彼岸桜）やセンボンヒガン（千本彼岸）があります。エドヒガンの別名もヒガンザクラであり、カンヒザクラをヒカンザクラと呼ぶこともあるため、混同しないように注意が必要です。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、173頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
European Garden Flora; vol. IV; 1995.
Hilliers Manual of Trees and Shrubs.

関連項目

エドヒガン
* 高遠城址公園

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