コピュラ

コピュラ：主語と述語を繋ぐ役割

コピュラとは、文の主語と述語を結びつける補助的な品詞です。主語と述語を繋ぐ役割を果たすため、繋辞（けいじ）と呼ばれることもあります。ラテン語の「連結」を意味する名詞に由来し、多くの言語で動詞のように機能するため、特別な動詞として分類される場合もあります。

コピュラを用いた文は、典型的には「X＝Y」の形で表されます。ここで重要なのは、「X」と「Y」の関係性です。両者が完全に一致する関係を指定、「Y」が「X」の属性を表す関係を措定と呼び、言語によってはこれらを区別して表現します。例えば、英語のbe動詞は、指定と措定の両方の機能を持ちます。

また、コピュラと存在動詞が共通の言語も多く存在しますが、両者が全く異なる言語もあります。

各言語におけるコピュラの多様性

日本語

日本語では、「だ」「です」「である」「ない」「らしい」「ようだ」「ちがいない」「しれない」「そうだ」「になる」などがコピュラとして機能します。学校[[文法]]では、「だ」「です」「らしい」「ようだ」「そうだ」は助動詞として扱われるのが一般的です。「や」「じゃ」なども方言によっては使用されます。名詞と名詞の関係を表す「の」のうち、「である」で置き換え可能な、同格を表すものもコピュラに含める場合があります。「です」「である」「になる」などは、存在を表す「ある」から派生したものと考えられています。

日本語の特徴として、一致や属性を意味しない文脈でもコピュラを使用することがあります。「ぼくはウナギだ」のような文は、この典型的な例です。このような用法は「ウナギ文」と呼ばれ、文法的な説明が盛んになされています。

英語

英語では、be動詞（am, is, are, was, were, be, being, been）やbecomeがコピュラとして機能し、linking verb（連結動詞）またはcopulative verb（繋合動詞）と呼ばれます。動詞として分類されることが多いです。

その他のインド・ヨーロッパ語族

ドイツ語のsein（である）、werden（なる）、フランス語のêtre（である）、devenir（なる）などもコピュラとして機能します。英語のbe動詞と同様に、存在動詞としての機能も併せ持っています。

ロマンス語では、ラテン語のesse（普遍的な属性）とstare（一時的な状態）に由来する2種類のコピュラが存在する言語が多くあります。スペイン語のserとestar、イタリア語のessereとstareがその例です。同じ意味を表す文でも、どちらの動詞を使うかで微妙な意味合いの違いが生じます。例えば、「Jaime es viejo」は「ハイメは年寄りだ」という意味ですが、「Jaime está viejo」は「ハイメは年をとった」という意味になり、「以前は年寄りではなかった」というニュアンスが含まれます。

アイルランド語では、動詞Táがコピュラとして機能し、コピュラ形の不変化詞Isに変化します。インド・ヨーロッパ語族の言語では、コピュラは複雑な語形変化をすることが多くあります。

中国語

中国語では、「是」がコピュラとして機能します。文語文や広東語、客家語では「係」が使用されます。「為」も同様の用法がありますが、いずれも語形変化はありません。日本語や英語と同様に、主語や目的語が省略され、ウナギ文のような形になる場合があります。

朝鮮語

朝鮮語では「이다」がコピュラに相当します。

アイヌ語

アイヌ語では、他動詞neがコピュラとして機能し、人称接辞が接頭します。「私は男だ」はOkkay ku=ne.、「お前は男だ」はOkkay e=ne.となります。日本語のようなウナギ文は見られず、存在動詞は自動詞で、コピュラとは全く別の動詞です。

コピュラのない、または使用しない言語

アラビア語、ロシア語（現在時制）、インドネシア語などでは、コピュラに相当する単語がなく、またはあってもほとんど使用されません。主語と述語を並べることで、両者の等位関係を示します。「私はムスリムだ」はアラビア語で「انا مسلم」、「私はかもめだ」はロシア語で「Я чайка.」、「私はインドネシア人だ」はインドネシア語で「Saya orang Indonesia.」となります。日本語や中国語でも、コピュラを省略することがありますが、コピュラの使用が一般的である言語と比較すると、その頻度は低いと言えます。

まとめ

コピュラは、一見単純な品詞のように見えますが、その機能や表現は言語によって大きく異なります。本稿では、いくつかの言語におけるコピュラの使用例を紹介しましたが、世界には更に多くの言語があり、それぞれの言語でコピュラに関する独自の規則や特徴があります。コピュラを理解することは、言語の構造を理解する上で重要な一歩となります。

もう一度検索