述語

述語とは

述語は、文を構成する上で非常に重要な要素であり、文の中心となる部分を指します。しかし、その捉え方は、伝統文法と現代言語学で異なっています。

伝統文法における述語

伝統文法では、述語は「主語以外の部分」と定義されます。つまり、文の中で主語以外の名詞句はすべて述語に含まれるとされます。例えば、「猫が庭で遊んでいる」という文では、「庭で遊んでいる」の部分が述語となります。

現代言語学における述語

一方、現代言語学では、述語は「節の中心となる動詞と、その動詞を修飾する部分」と定義されます。この場合、名詞句は述語には含まれません。例えば、「猫が庭で遊んでいる」という文では、「遊んでいる」の部分が述語となります。

単文と複文

文には、述語が一つだけの単文と、述語が二つ以上ある複文（または重文）があります。複文は、複数の節から構成されており、それぞれの節が述語を中心としたまとまりを成しています。

主語と主題

述語は、主語と密接な関係にあります。主語は、述語が表す動作や状態の主体を示す文法的役割を持つ格です。

主語の役割

印欧語などでは、主語となる名詞句は文頭に置かれ、述語動詞の語形が主語の名詞の変化に応じて変化します。例えば、英語の「I love him」と「Mary loves him」では、主語の変化に応じて動詞の語形が変わります。このように、主語と述語の関係を「主述関係」と呼びます。

日本語における主題

一方、日本語では、主語を表す「が」で導かれる名詞句が必ずしも文頭に置かれるとは限りません。文頭に置かれるのは、「は」で導かれる名詞句で、これは文全体で取り上げられる主題を表します。主題は主語とは限らず、例えば「私はご飯を食べた」では主語ですが、「ご飯は私が食べた」では目的語となります。

主語廃止論

学校文法では「が」で表される語も「は」で表される語も主語とされますが、三上章は西洋言語学由来の「主語」という概念を日本語に適用すべきではないと主張しました。この主張は当時受け入れられなかったものの、現在では一定の評価を得ています。

日本語の述語

日本語の述語は通常1文節ですが、2文節以上のものを述部と呼びます。述部になる連文節には、次のようなものがあります。

動詞（又は動詞+付属語）の連用形+接続助詞「て・で」+補助動詞（例:「立っている」「しまっておく」）
用言の連用形+接続助詞「て・で」+用言の述語（例:「続いて並ぶ」「白くて美しい」「静かで心地よい」）
連体修飾語と体言の述語からなる連文節（例:「きれいな花だ」「優しい先生だ」）

以下のものは、述部にはなりません。

連用修飾部と用言の述語（連文節とならないため）
複合動詞（1語で1文節となるため）

述語文の種類

述語に使われる語によって、文の種類は異なります。述語には、動詞、形容詞、形容動詞、名詞+コピュラが使われ、それぞれ動詞文、形容詞文、形容動詞文、名詞文（コピュラ文）と呼ばれます。

日本語では、述語は文末に置かれ、普通体と丁寧体があります。普通体は、動詞が「-u」（「う段」音）、形容詞が「い」、形容動詞・コピュラが「だ」で終わるものを指し、丁寧体はそれぞれ「ます」「です」で終わるものを指します。

形式論理学における述語

述語という概念は、形式論理学にも深く関わっています。アリストテレスは、命題「AはBである」におけるB（Aについて語る事柄）をギリシア語で表現しました。これがラテン語を経て、ヨーロッパ諸言語に「predicate」として継承され、日本語では「述語」と訳されるようになりました。

形式論理学では、述語は「AはBである」という形の命題におけるBと定義すれば足りますが、文法においては、各言語の様々な文型を考慮して述語を捉え直す必要があります。

しかし、文法上の述語として扱われてきたものは、今日の言語学的な観点から見ても妥当であると考えられます。ヨーロッパ諸言語が、主語を他の文成分と区別して扱い、残りを述語として文を二分してきたことは、自然なことであると言えるでしょう。

関連項目

文法
文の成分
節 (文法)
統語論
構成素
句
名詞句
動詞句
論理学
* コピュラ

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