コミック&コミック

コミック＆コミック：映画と劇画が交錯した異色の雑誌

『コミック＆コミック』は、1973年から1974年にかけて徳間書店から発行されていた成人向け劇画雑誌です。アサヒ芸能の別冊として刊行され、表紙には『別冊アサヒ芸能 コミック＆コミック』と記載されていました。

概要

1973年5月30日、6月13日号として創刊され、月2回水曜日に刊行されていましたが、1974年9月4日号で休刊となりました。

創刊の背景

1960年代の映画業界の斜陽を受け、映画製作・配給に依存していた大映や日活が事実上撤退。その状況を鑑みた東映の岡田茂社長は、映画部門以外からの収益を模索し、1972年6月に事業部制を導入しました。その中で、岡田社長が特に注力したのが出版事業でした。1973年2月にはテレビ関連事業室を設置し、黒崎出版との提携による『テレビランド』創刊に続き、徳間書店社長の徳間康快と共に企画したのが『コミック＆コミック』でした。

岡田と徳間は、映画監督と劇画家を組ませて映画化を前提とした作品を掲載するという構想を持っており、創刊号に掲載された主要8作品のうち3作品が東映の監督を原作としていました。当時、東映はエロと暴力を前面に押し出した「不良性感度路線」を突き進んでおり、そのエネルギーを劇画というサブカルチャーと結びつけたこの雑誌は、読者の間で歓迎され、二十数万部を記録しました。映画と劇画を大胆に往復する感覚は、後のメディアミックスを先取りするものであり、非常に野心的でした。1972年8月には、梶芽衣子主演、伊藤俊也監督による篠原とおる原作の劇画「女囚さそりシリーズ」が映画化され成功したことも、劇画を映画の原作供給源として捉えるきっかけとなりました。

岡田と徳間は、『コミック＆コミック』創刊と同じ1973年に『アサヒ芸能』で田岡一雄の自伝を連載し、『山口組三代目』の原作としたり、大映を再建中の徳間を岡田が支援するなど、ビジネス上の関係も深めていました。徳間は岡田のことを「刎頸の友」と表現するほど親密な関係を築いていました。

編集に携わった人物

鈴木敏夫は、『アサヒ芸能』の特集部を経て、『コミック＆コミック』編集部に在籍した後、『テレビランド』編集部に移り、後に『アニメージュ』編集部に移りました。鈴木は「『コミック＆コミック』でキャッチコピーを学んだ」と語っており、漫画編集の仕事を通して宣伝のやり方を学んだと述べています。大塚英志は、東映の気難しい監督たちと若手劇画家たちの調整役は大変だったのではないかと指摘しています。

大塚はさらに、「劇画」「漫画」と「映画」「アニメーション」の境界が低いこの国において、岡田茂と徳間康快という二人の怪物による『コミック＆コミック』の存在は、宮崎駿監督の『ナウシカ』における「まんが」から「映画」への近さと地続きであると論じています。劇画と映画の境界で雑誌を作ろうとした『コミック＆コミック』は、メディアミックスという言葉では表現できない二つのジャンルの近さを象徴する雑誌だったとしています。

休刊とその背景

組合色が強かったことが災いし、1974年9月4日号で告知なく休刊となりました。スタッフは『アサヒ芸能』や『テレビランド』などに散らばることになりました。

主な掲載作品

くノ一捕物帖 恋縄緋鳥（作：石森章太郎）
新くノ一捕物帖 大江戸緋鳥808（作：石森章太郎）
刺客(てろ)（原作：工藤栄一、作画：藤生豪）
ラブ（原作：中島貞夫、作画：上村一夫）
すけこまし（原作：梶山季之、作画：横山まさみち）
兇悪の門（原作：生島治郎、作画：北野英明）
猟(あさる)（原作：石井輝男、作画：キシもとのり）
銭牝（原作：花登筺、作画：東田健二）
マジックミラーの女（作：篠原とおる）
聖獣学園（原作：鈴木則文、作画：沢田竜治）
さ無頼（原作：小池一夫、作画：藤生豪） ※『忘八武士道 さ無頼』の原作
女狼（原作：深作欣二・長田紀生、作画：小山春夫）
刑事（でか）もどき（手塚治虫）※エピソード「エムレット」は昭和48年10月3日号、「鹿の角」が昭和49年1月23日号。
魔女モンロー（水木しげる）

その他の特徴

雑誌の一頁目には必ず外国人女性のヌードピンナップが掲載されていました。また、飲食や映画、ショッピングなどのガイドや、東映スターのサイン入り色紙、東映撮影所見学招待、東映映画無料招待、東映直営ボウリング場招待、徳間と関係の深い歌手のアルバムなどが当たる懸賞企画もありました。


『コミック＆コミック』は、映画と劇画という二つのジャンルを大胆に結びつけ、メディアミックスの先駆けともいえる試みを行った、時代を象徴する雑誌でした。

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