聖獣学園

『聖獣学園』（せいじゅうがくえん）は、1974年に公開された日本の映画です。東映東京撮影所が製作し、多岐川裕美のデビュー作として知られています。修道院を舞台にしたエロティックかつバイオレンスな描写が特徴で、公開当時は不入りでしたが、後に再評価され、カルト的な人気を得ました。

製作の背景

1970年代初頭、東映は多角経営の一環として出版事業に進出しました。その中で、成人向け劇画雑誌『コミック&コミック』が創刊され、映画監督と劇画家を組ませて映画化するというメディアミックス戦略が打ち出されました。

『聖獣学園』の原作は、同誌に連載された鈴木則文による同名劇画です。鈴木は、「不良女子高生もので、映画化可能なエロとバイオレンス満載」という依頼を受け、修道院を舞台にした物語を構想しました。そこには、ポーランド映画『尼僧ヨアンナ』などからインスピレーションを得ていたと言われています。

多岐川裕美のスカウト

ヒロインの多岐川魔矢役はオーディションで選ばれる予定でしたが、なかなかイメージに合う新人女優が見つかりませんでした。そんな中、高村賢治プロデューサーが、東京駅近くでアルバイトをしていた女子大生の多岐川裕美を見つけ、出演交渉をしました。多岐川は当初、演技経験がないことを理由に難色を示しましたが、岡田茂東映社長との面談を経て出演が決まりました。芸名も、役名である多岐川魔矢から「多岐川」、そして鈴木監督が雑誌で見つけた懸賞の一等入選者の名前にちなんで「裕美」と名付けられました。

あらすじ

主人公の多岐川魔矢は、一夜を共にした男性と別れ、セントクロア修道院に入ります。そこは厳しい戒律に縛られた場所でしたが、魔矢は18年前に亡くなった副院長の母の死の真相を探るためにやってきました。修道院の生活に馴染めない魔矢は、外の世界の男性と接触し、修道院内で様々な事件を起こします。そして、母の死の真相が明らかになるにつれて、修道院の闇が徐々に明らかになっていきます。

魔矢の母親は、修道院の院長によって責められ命を絶ったとされていますが、実はその時に魔矢を産み落とし、助けられていたのです。さらに、魔矢の父親は滝沼司祭であり、彼が影で多くの修道女に手を付け、身籠った者を拷問の末に殺していたことが明らかになります。院長もまた、魔矢の母に嫉妬し、葬ったという事実も判明します。そして、司祭は魔矢を殺そうとしますが、逆に魔矢によって討たれるという衝撃的な結末を迎えます。

公開後の反響

本作は、渡瀬恒彦主演の『学生やくざ』との同時上映で公開されましたが、当初は全くヒットしませんでした。しかし、多岐川裕美が清純派女優として人気を集めるにつれて、彼女のヌードシーンを含む本作が再評価され、カルト的な人気を獲得しました。特に海外ではカルトムービーとして扱われることがあります。

作品の評価

『聖獣学園』は、日本のナンスプロイテーション映画の古典として評価されています。多岐川裕美の体当たりの演技や、修道院を舞台にしたエロティックかつバイオレンスな描写が特徴で、一部の映画ファンから熱狂的な支持を得ています。1980年には、石井聰亙監督の『狂い咲きサンダーロード』との同時上映でリバイバル公開され、興行的にも成功を収めました。

監督と主演女優のその後

監督の鈴木則文は、本作の不入りをきっかけに、ヒット作を作るまで東京撮影所に残るように命じられましたが、その後『女必殺拳』シリーズや『トラック野郎』シリーズを大ヒットさせ、人気監督となりました。一方、主演の多岐川裕美は、本作以降、ヌードを拒否し、東映作品を敬遠しました。その後、テレビドラマで活躍し、清純派女優として人気を博しましたが、本作でのヌードがメディアで取り上げられ、話題となりました。

スタッフとキャスト

原作・監督・脚本：鈴木則文
漫画：沢田竜治
企画：高村賢治
脚本：掛札昌裕
撮影：清水政夫
音楽：八木正生
* キャスト：多岐川裕美、谷隼人、山内えみこ、渡辺やよい、大谷アヤ、その他

作品の魅力

『聖獣学園』は、単なるエロティック映画ではなく、人間の欲望や狂気を描いた、重厚なドラマとしても評価できます。修道院という閉鎖的な空間を舞台に、人間の業を描いた物語は、多くの観客を魅了しています。

衝撃的な内容と、多岐川裕美の熱演は、一度見たら忘れられないインパクトを与えてくれるでしょう。

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