コメンスメント・ベイ級航空母艦
コメンスメント・ベイ級航空母艦は、アメリカ海軍が建造した最後の護衛空母の艦級です。この艦級は、1944年度計画に基づいて建造され、前級のカサブランカ級航空母艦の設計が完了する以前の1942年10月から検討が開始されました。サンガモン級航空母艦と同様に、T2型油槽船をベースとしていますが、カサブランカ級と同様に、既存の船体を改造するのではなく、船体の設計図を流用して新たに設計されました。そのため、油槽船の特徴的な外観は失われています。
当初は35隻の建造が計画されていましたが、設計作業の遅延と終戦の影響により、最終的に完成したのは21隻のみとなりました。第二次世界大戦に間に合ったのはそのうち10隻で、戦局がほぼ決していた時期の就役であったため、目立った戦果は上げられませんでした。
基本設計はサンガモン級と大差ありませんが、飛行甲板は前後に延長され、幅は若干狭められました。また、従来の護衛空母とは異なり、2基のカタパルトが装備されています。これは艦載機の発進間隔を短縮するためのもので、そのうち1基はエセックス級航空母艦に搭載されているものと同型の大型カタパルトでした。機関配置もサンガモン級とは異なり、シフト配置が採用されています。兵装は、艦尾に38口径5インチ単装砲2基を搭載し、40ミリ機関砲と20ミリ機銃の数も増やされました。
コメンスメント・ベイ級は、艦型や性能に余裕があり、戦闘による大きな損害もなかったため、他の護衛空母と比較して長く現役にとどまることができました。戦後は強襲揚陸艦やヘリ空母として運用された艦も多く、中には1970年代まで現役を続けた艦もあり、アメリカ護衛空母史の最後を飾る存在となりました。
就役時期の関係から、第二次世界大戦での目立った戦果はありませんでしたが、1950年からの朝鮮戦争では、唯一の第一線で活動した護衛空母となりました。
運用面で特筆すべきは、2番艦のブロック・アイランドが1945年2月に海兵隊専用空母となり、F6Fヘルキャットの夜間戦闘機バージョンであるF6F-5NとF4Uコルセアを主力とする第511海兵戦闘飛行隊を中心とした第1海兵空母飛行群（MCVG-1）を搭載し、沖縄戦に参加したことです。海兵隊の戦闘機は、1944年後半から正規空母に便乗する形で搭載されていましたが、「海兵隊が独自に空母を運用すれば、海軍の負担が軽減できるのでは」という発想から、海兵隊独自の空母運用が検討され、その結果、コメンスメント・ベイ級が海兵隊の空母として運用されることになりました。
その後、ギルバート・アイランズに第2海兵空母飛行群、ヴェラ・ガルフに第3海兵空母飛行群、ケープ・グロスターに第4海兵空母飛行群が搭載されました。ギルバート・アイランズはブロック・アイランドと共に沖縄戦に参加し、1945年5月31日には、第512海兵戦闘飛行隊の1機が慶良間諸島上空で一〇〇式司令部偵察機を撃墜しました。その後、2隻はボルネオ島方面に転戦し、7月3日には第511海兵戦闘飛行隊機がバリックパパン沖で零式水上偵察機1機を撃墜しました。ケープ・グロスターは7月に沖縄に到着し、約1か月間東シナ海方面での攻勢機雷散布作戦と爆撃支援に従事し、作戦中に一〇〇式司令部偵察機や彗星などを撃墜しました。ヴェラ・ガルフは沖縄に到着した時には、すでに大戦が終結していました。また、クラ・ガルフは海軍の夜間戦闘機隊専用空母として整備されましたが、出撃後すぐに終戦となったため、活躍の機会はありませんでした。
艦名は当初、湾の名前を付ける方針でしたが、海戦や上陸作戦が行われた地名を記念して命名または改名された艦が多く存在します。
コメンスメント・ベイ (USS Commencement Bay, CVE-105/CVHE-105/AKV-37)
ブロック・アイランド[II] (USS Block Island, CVE-106/AKV-38)
ギルバート・アイランズ (USS Gilbert Islands, CVE-107/AKV-39/AGMR-1)
クラ・ガルフ (USS Kula Gulf, CVE-108/AKV-8)
ケープ・グロスター (USS Cape Gloucester, CVE-109/CVHE-109/AKV-9)
サレルノ・ベイ (USS Salerno Bay, CVE-110/AKV-10)
ヴェラ・ガルフ (USS Vella Gulf, CVE-111/CVHE-111/T-AKV-11)
シボニー (USS Siboney, CVE-112/AKV-12)
ピュージェット・サウンド (USS Puget Sound, CVE-113/CVHE–113/AKV–13)
レンドヴァ (USS Rendova, CVE-114/AKV-14)
バイロコ (USS Bairoko, CVE-115/AKV-15)
バドエン・ストレイト (USS Badoeng Strait, CVE-116/AKV-16)
セイダー (USS Saidor, CVE-117/CVHE-117/AKV-17)
シシリー (USS Sicily, CVE-118/AKV-18)
ポイント・クルーズ (USS Point Cruz, CVE-119/AKV-19/T–AKV–19)
ミンドロ (USS Mindoro, CVE-120/AKV-20)
ラバウル (USS Rabaul, CVE-121/CVHE-121/AKV-21)
パラオ (USS Palau, CVE-122/AKV-22)
ティニアン (USS Tinian, CVE-123/CVHE-123/AKV-23)
バストーニュ（建造キャンセル） (USS Bastogne, CVE-124)
エニウェトク（建造キャンセル） (USS Eniwetok, CVE-125)
リンガエン（未成艦） (USS Lingayen, CVE-126)
オキナワ（未成艦） (USS Okinawa, CVE-127)
「アメリカ航空母艦史」『世界の艦船』増刊第10集第201号、海人社、1981年1月、NDLJP:3292079。
「第2次大戦のアメリカ軍艦」『世界の艦船』増刊第15集第337号、海人社、1984年6月、NDLJP:3292125。
渡辺洋二「夜のヘルキャット」『大空の攻防戦』朝日ソノラマ〈新戦史シリーズ〉、1992年3月。ISBN 4-257-17248-7。
大塚好古「アメリカの空母各級厳選写真集」「数は力 力は正義なり！護衛空母群の航空戦力」「太平洋戦争時における護衛空母全般の評価」「太平洋戦争における米空母の各種艦上機」『アメリカの空母 対日戦を勝利に導いた艦隊航空兵力のプラットホーム』学習研究社〈「歴史群像」太平洋戦史シリーズ〉、2006年2月。ISBN 4-05-604263-2。
アメリカ海軍護衛空母一覧
アメリカ海軍艦艇一覧
USS Commencement Bay Class Escort Carriers from Global Security.Org
* USS Commencement Bay Class from Battleships-Cruisers.co.uk
当初は35隻の建造が計画されていましたが、設計作業の遅延と終戦の影響により、最終的に完成したのは21隻のみとなりました。第二次世界大戦に間に合ったのはそのうち10隻で、戦局がほぼ決していた時期の就役であったため、目立った戦果は上げられませんでした。
基本設計はサンガモン級と大差ありませんが、飛行甲板は前後に延長され、幅は若干狭められました。また、従来の護衛空母とは異なり、2基のカタパルトが装備されています。これは艦載機の発進間隔を短縮するためのもので、そのうち1基はエセックス級航空母艦に搭載されているものと同型の大型カタパルトでした。機関配置もサンガモン級とは異なり、シフト配置が採用されています。兵装は、艦尾に38口径5インチ単装砲2基を搭載し、40ミリ機関砲と20ミリ機銃の数も増やされました。
コメンスメント・ベイ級は、艦型や性能に余裕があり、戦闘による大きな損害もなかったため、他の護衛空母と比較して長く現役にとどまることができました。戦後は強襲揚陸艦やヘリ空母として運用された艦も多く、中には1970年代まで現役を続けた艦もあり、アメリカ護衛空母史の最後を飾る存在となりました。
戦歴
就役時期の関係から、第二次世界大戦での目立った戦果はありませんでしたが、1950年からの朝鮮戦争では、唯一の第一線で活動した護衛空母となりました。
運用面で特筆すべきは、2番艦のブロック・アイランドが1945年2月に海兵隊専用空母となり、F6Fヘルキャットの夜間戦闘機バージョンであるF6F-5NとF4Uコルセアを主力とする第511海兵戦闘飛行隊を中心とした第1海兵空母飛行群（MCVG-1）を搭載し、沖縄戦に参加したことです。海兵隊の戦闘機は、1944年後半から正規空母に便乗する形で搭載されていましたが、「海兵隊が独自に空母を運用すれば、海軍の負担が軽減できるのでは」という発想から、海兵隊独自の空母運用が検討され、その結果、コメンスメント・ベイ級が海兵隊の空母として運用されることになりました。
その後、ギルバート・アイランズに第2海兵空母飛行群、ヴェラ・ガルフに第3海兵空母飛行群、ケープ・グロスターに第4海兵空母飛行群が搭載されました。ギルバート・アイランズはブロック・アイランドと共に沖縄戦に参加し、1945年5月31日には、第512海兵戦闘飛行隊の1機が慶良間諸島上空で一〇〇式司令部偵察機を撃墜しました。その後、2隻はボルネオ島方面に転戦し、7月3日には第511海兵戦闘飛行隊機がバリックパパン沖で零式水上偵察機1機を撃墜しました。ケープ・グロスターは7月に沖縄に到着し、約1か月間東シナ海方面での攻勢機雷散布作戦と爆撃支援に従事し、作戦中に一〇〇式司令部偵察機や彗星などを撃墜しました。ヴェラ・ガルフは沖縄に到着した時には、すでに大戦が終結していました。また、クラ・ガルフは海軍の夜間戦闘機隊専用空母として整備されましたが、出撃後すぐに終戦となったため、活躍の機会はありませんでした。
同型艦
艦名は当初、湾の名前を付ける方針でしたが、海戦や上陸作戦が行われた地名を記念して命名または改名された艦が多く存在します。
コメンスメント・ベイ (USS Commencement Bay, CVE-105/CVHE-105/AKV-37)
ブロック・アイランド[II] (USS Block Island, CVE-106/AKV-38)
ギルバート・アイランズ (USS Gilbert Islands, CVE-107/AKV-39/AGMR-1)
クラ・ガルフ (USS Kula Gulf, CVE-108/AKV-8)
ケープ・グロスター (USS Cape Gloucester, CVE-109/CVHE-109/AKV-9)
サレルノ・ベイ (USS Salerno Bay, CVE-110/AKV-10)
ヴェラ・ガルフ (USS Vella Gulf, CVE-111/CVHE-111/T-AKV-11)
シボニー (USS Siboney, CVE-112/AKV-12)
ピュージェット・サウンド (USS Puget Sound, CVE-113/CVHE–113/AKV–13)
レンドヴァ (USS Rendova, CVE-114/AKV-14)
バイロコ (USS Bairoko, CVE-115/AKV-15)
バドエン・ストレイト (USS Badoeng Strait, CVE-116/AKV-16)
セイダー (USS Saidor, CVE-117/CVHE-117/AKV-17)
シシリー (USS Sicily, CVE-118/AKV-18)
ポイント・クルーズ (USS Point Cruz, CVE-119/AKV-19/T–AKV–19)
ミンドロ (USS Mindoro, CVE-120/AKV-20)
ラバウル (USS Rabaul, CVE-121/CVHE-121/AKV-21)
パラオ (USS Palau, CVE-122/AKV-22)
ティニアン (USS Tinian, CVE-123/CVHE-123/AKV-23)
バストーニュ（建造キャンセル） (USS Bastogne, CVE-124)
エニウェトク（建造キャンセル） (USS Eniwetok, CVE-125)
リンガエン（未成艦） (USS Lingayen, CVE-126)
オキナワ（未成艦） (USS Okinawa, CVE-127)
脚注
参考文献
「アメリカ航空母艦史」『世界の艦船』増刊第10集第201号、海人社、1981年1月、NDLJP:3292079。
「第2次大戦のアメリカ軍艦」『世界の艦船』増刊第15集第337号、海人社、1984年6月、NDLJP:3292125。
渡辺洋二「夜のヘルキャット」『大空の攻防戦』朝日ソノラマ〈新戦史シリーズ〉、1992年3月。ISBN 4-257-17248-7。
大塚好古「アメリカの空母各級厳選写真集」「数は力 力は正義なり！護衛空母群の航空戦力」「太平洋戦争時における護衛空母全般の評価」「太平洋戦争における米空母の各種艦上機」『アメリカの空母 対日戦を勝利に導いた艦隊航空兵力のプラットホーム』学習研究社〈「歴史群像」太平洋戦史シリーズ〉、2006年2月。ISBN 4-05-604263-2。
関連項目
アメリカ海軍護衛空母一覧
アメリカ海軍艦艇一覧
外部リンク
USS Commencement Bay Class Escort Carriers from Global Security.Org
* USS Commencement Bay Class from Battleships-Cruisers.co.uk
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。