零式水上偵察機

零式水上偵察機（E13A）

零式水上偵察機、通称「零水」または「零式水偵」は、愛知航空機によって開発され、日本海軍において1940年12月に正式に採用された水上偵察機です。この機体は、艦載機や水上基地からの運用が可能な長距離偵察機として開発され、非常に優れた飛行性能を持つことが求められました。

開発の背景

1940年代初頭、日本海軍は電子戦の重要性を認識し、それに応じた偵察機の開発が急務となりました。1937年から1940年にかけて、九四式水上偵察機の後継機として開発が進められました。当初、川西航空機製作所と愛知航空機により競争的に設計され、愛知航空機の設計が最終的に採用されました。
愛知航空機は、開発当初から他の機体の開発に追われており、納期に間に合わないことが予想されたものの、研究資料として製作を続行。その結果、1939年1月には最初の試作機が完成し、6月に海軍によりその飛行性能が評価されました。

構造と性能

零式水上偵察機は、低翼単葉の双浮舟式水上機であり、主な構造は金属製、翼端だけは木製となっています。主翼は折りたたみ可能で、また炸裂倉を搭載可能であることが特徴でした。全長は11.49メートル、翼幅は14.5メートル、最大速度は367km/hに達しました。
本機は通常、3名の乗員を搭載し、最大航続距離は3,326kmに及びました。また、武装としては固定式の九七式7.7mm機銃と60kgまたは250kgの爆弾を搭載することができました。

運用とフライトパフォーマンス

1941年以降、この機体は日本海軍の艦船だけでなく、基地からも運用され、戦争初期には偵察任務を中心に活躍しました。しかし、1943年以降は敵方の防空網が強化されたため、偵察任務は艦上機にシフトしていきました。それでも、零式水上偵察機は終戦まで多くの任務に従事し、特に対潜哨戒や輸送任務での運用が続けられました。
日本陸軍に譲渡された機体もあり、他国への供与も行われました。特にタイやフランス軍に引き渡されたものは、各々の地域で使用され、戦争のさまざまな局面に寄与しました。

生産状況と現存機体

零式水上偵察機の生産は愛知航空機だけでなく、渡辺鉄工所や広海軍工廠でも行われ、総生産数は1,423機に達しました。中でも愛知航空機で作られた機体は全体の約10%を占めます。
戦後、約200機が残存していた中、海中から引き上げられた機体が鹿児島県の万世特攻平和祈念館に展示されていることから、今でも多くの人々に見守られています。

関連作品

この機体は、様々なメディアにも登場し、例えばゲームなどではプレイヤーが使用できる兵器として描かれることがあります。『艦隊これくしょん』や『蒼の英雄 Birds of Steel』などで見ることができます。

日本海軍の歴史の中で重要な役割を果たした零式水上偵察機は、その優れた性能と運用実績から、今でも多くの人々にその名前が記憶されています。

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