コンピュータアート

コンピュータアートとは

コンピュータアートは、作品の制作や展示においてコンピュータが重要な役割を果たす芸術の一分野です。この芸術形式は、技術とソフトウェアの急速な進化によって常に変化しており、その進化的な性質が特徴です。伝統的な芸術分野とデジタル技術の融合が進むにつれて、既存の芸術作品とコンピュータを用いた新しいメディア作品との境界線は曖昧になりつつあります。

コンピュータアートの作品形態は多岐にわたります。画像、音響、アニメーション、ビデオ、CD-ROM、DVD-ROM、ウェブサイト、アルゴリズム、劇場での公演、美術館での展示など、非常に多様な表現方法が存在するため、コンピュータアートを一言で定義することは困難です。しかし、共通して言えることは、作者がコンピュータを制作の主要なツールとして用いているということです。

「コンピュータアート」という言葉の誕生

「コンピュータアート」という言葉は、エドモンド・バークレーによって生み出されました。彼は、1963年1月号の雑誌「Computers and Automation」の表紙にエフィ・アラジが1962年に制作した画像を掲載し、それを「コンピュータアート」と紹介しました。この出来事がきっかけとなり、1963年には初のコンピュータアートコンテストが開催されました。このコンテストは1973年まで毎年開催され、コンピュータアートの発展において重要な役割を果たしました。

コンピュータアートの歴史

コンピュータアートの先駆的な事例は、1956年から1958年にまで遡ります。当時、SAGE防空装置のディスプレイに、ジョージ・ペティーのピンナップアートを基にした線画が表示されました。これは、コンピュータの画面上に初めて人間の絵が表示された瞬間でした。

1960年には、デスモンド・ポール・ヘンリーがHenry Drawing Machine（ヘンリー描画装置）を発明しました。彼の作品は1962年にロンドンのリードギャラリーで個展が開かれ、機械によって生成されたアートが展示されるという画期的な出来事となりました。

1960年代半ばまで、コンピュータアートに関わっていたのは主に工学者や科学者であり、彼らは大学などの研究室でしか利用できないコンピュータを使用していました。しかし、その後、多くのアーティストがコンピュータを新しい創造的なツールとして使い始めました。1962年の夏には、ベル研究所のA・マイケル・ノルがコンピュータをプログラムし、芸術的な視覚パターンを生成しました。彼はその後、コンピュータによって生成されたパターンを使って、ピエト・モンドリアンやブリジット・ライリーの絵画をシミュレーションしました。

1965年には、コンピュータアートの初期の展覧会が二つ開催されました。一つはドイツのシュトゥットガルトで開催された「Generative Computergrafik」、もう一つはニューヨークのHoward Wise Galleryで開催された「Computer-Generated Pictures」です。これらの展覧会では、ゲオルク・ニース、ユレス・ベーラ、A・マイケル・ノルなどの作品が展示されました。1968年には、ロンドンの現代芸術協会（ICA）で「サイバネティック・セレンディピティ」というコンピュータアートの展覧会が開催され、ナム・ジュン・パイク、フリーダー・ナーケ、レスリー・メゼイなど、後のデジタルアーティストたちの作品が展示されました。

出力デバイスの進化

初期のコンピュータアートでは、技術的な制約から出力や印刷結果に制限がありました。初期の出力装置では、ペンとインクを使用するプロッターが用いられ、描けるのは線画に限られていました。しかし、技術の進歩とともに、マイクロフィルムプリンタやドットマトリックスプリンタが登場し、より多様な表現が可能となりました。1976年にはインクジェットプリンタが発明され、パーソナルコンピュータでの利用が広まり、今日では最も安価で汎用性の高いデジタルカラー出力方式となっています。

グラフィックソフトウェアの発展

1982年に設立されたアドビシステムズは、ページ記述言語PostScriptやデジタルフォントを開発し、描画と画像操作のソフトウェアを一般化しました。特に、1987年に登場したベジエ曲線に基づくベクトル描画プログラムの「Adobe Illustrator」と、1990年に登場した画像編集ソフトウェアの「Adobe Photoshop」は、コンピュータアートの発展に大きく貢献しました。

ニューラルネットワークによる画風変換

近年では、非写実的レンダリング（コンピュータを使用して画像を様式化されたアートに自動的に変換する技術）の研究が進んでいます。2015年頃からは、畳み込みニューラルネットワークを用いて、アート作品の画風を抽出し、写真などの画像の画風を変換する「neural style transfer」という技術が実現しました。この技術により、VGGやResNetなどのフレームワークを使用して、アートワークの画風を視覚的特徴に関する統計に分解し、対象の画像をその統計に合わせて修正することが可能になりました。

コンピュータアートの多様な表現

コンピュータアートは、その名の通りコンピュータを駆使した芸術であり、表現方法は多岐にわたります。アルゴリズムアート、デジタルペインティング、フラクタルアート、ジェネレーティブアート、メディアアート、ソフトウェアアート、インターネットアートなど、様々なジャンルが存在します。さらに、ゲームアートやグリッチアート、人工知能アートなど、新たな表現形式も常に生まれています。

コンピュータアートは、技術の進歩と共に進化し続ける芸術です。その多様な表現と可能性は、今後も多くのアーティストを魅了し、新たな創造を生み出していくでしょう。

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