コーカンド・ハン国

コーカンド・ハン国の歴史

コーカンド・ハン国（ウズベク語: Qo'qon xonligi）は、18世紀後半から19世紀前半にかけて中央アジアで栄えたテュルク系のイスラム王朝です。この国の中心地はフェルガナ盆地にあり、ウズベキスタンのコーカンドを都としていました。また、周辺のカザフスタン、キルギス、タジキスタンの一部にもその領土が広がっていました。

成立と初期の発展

コーカンド・ハン国は、16世紀以降にフェルガナ地方に流入したウズベク系諸部族によって形成されました。当時、この地域はブハラ・ハン国の支配下にありました。しかし、17世紀末にはブハラ・ハン国が力を失い、地元のイスラム神秘主義教団に属する指導者たちが地方自治を担うようになりました。この状況を背景に、18世紀前半にはホージャの権力を打破したミング部族のビー（部族長）がフェルガナに自立政権を樹立し、1740年にコーカンドを都としました。

当初、コーカンド・ハン国は非常に弱小でしたが、オイラトのジュンガル帝国による侵攻などの外圧に直面しながらも、内政の安定を図りつつ勢力を拡大しました。特に、清朝の支配者がジュンガル帝国を討伐すると、コーカンドは清との朝貢関係を築くことで直接の軍事的脅威を軽減し、経済発展に繋げました。

最盛期の繁栄

1800年、コーカンド・ハン国はアーリムによって中心的な都市タシュケントを征服し、その後もカザフ草原にまで勢力を拡大しました。これに伴い、アーリムは「ハン」としての称号を受け、コーカンド・ハン国は本格的に名乗りを上げました。1810年にウマル・ハンが即位すると、ハン国は最盛期を迎え、軍事力を高めて周辺の部族に対して圧倒的な存在感を示しました。

通商面でも、清朝との関係を強化し、ロシアとも交易関係を結ぶなどして経済的な繁栄を享受しました。コーカンドは中央アジア最大の交易国とされ、中国製品や地域の特産品を通じて繁栄を極めました。

清との対立とその後の衰退

19世紀初頭に入ると、清朝はコーカンドの強大化に警戒し、その商人活動に規制をかけ始めます。そのため、コーカンド・ハン国は反発し、カシュガルへ野心を見せるようになります。1826年にはカシュガルに侵攻し、清朝との大規模な対立が表面化します。ただし、清はこれに対して断交しつつも圧力を加え続け、コーカンドとの関係を妥協せざるを得なくなりました。

繁栄の一方で、国内では政治的対立や反乱が頻発し、1842年にはブハラ・アミール国の攻撃を受けて君主が殺害され、支配が脅かされます。加えて、ロシア帝国の影響範囲も拡大し、コーカンド・ハン国への圧力が増加していきました。1853年にはロシア軍がアク・メチェト要塞を占領し、コーカンドは次第に追い詰められていきました。

最終的な滅亡

1864年、ロシアはコーカンド・ハン国への侵攻を開始し、翌1865年にはタシュケントを併合しました。1868年に至っては、ロシアとの保護条約を締結するに至り、コーカンド・ハン国はロシアの影響下に入ります。無力化されたコーカンド・ハン国は最終的に1876年にロシア軍によって滅ぼされます。

このように、コーカンド・ハン国は短い期間で栄光を極めたものの、内外の圧力によって衰退へと追いやられました。歴史の中で見逃されがちなこの王国の存在は、遊牧民文化や中央アジアの政治的変遷を理解する上で重要な要素となっています。

もう一度検索