コーポラティズム

コーポラティズムの概念と歴史

コーポラティズム（英: Corporatism）は、利益団体が共通の利害を基に契約や政策の調整を行う政治システムで、その起源は19世紀のヨーロッパに遡ります。個人主義的な自由主義に対抗する形で登場し、共同体を人間の身体に例え、個々の役割を重視した思想が根底にあります。

歴史的背景

19世紀には、オーストリアのオトマール・シュパンやイギリスのギルド社会主義など、コーポラティズムに近い思想が展開されました。教皇レオ13世やピウス11世の回勅も、社会的連帯の重要性を説くものでした。また、ワイマール憲法における経済議会は、コーポラティズムの制度化と見なされています。

20世紀初頭にかけて、イタリアのファシズムによる国家コーポラティズムが進展しました。ムッソリーニの下で、経営者や労働者を代表する団体が国家によって組織され、経済は国家により統制されました。このような結果を「権威主義的コーポラティズム」と呼ぶこともあります。

第二次世界大戦後は、特に北欧の民主主義体制において、政府と労働組合などの利害団体が協調して政策を進める新たな形態が生まれました。これが「ネオ・コーポラティズム」と呼ばれ、より支持を受けた形で発展していきました。

コーポラティズムの特徴

コーポラティズムでは、政策決定において関係団体が調整を行い、社会全体の利害を反映させることを目指します。特に、経営者、労働者、国家の間での三者構成原則に基づき、経済政策を設定することが重視されます。これは、経済だけでなく、農業や宗教、科学など多方面においても見られます。

コーポラティズムの用語はラテン語の「corpus」（身体）に由来し、日本では「協同主義」「協調主義」などと訳されています。特に戦前は、団体統合の原理が重要視されていましたが、戦後は政府と圧力団体との密接な連携が強調されるようになりました。

ネオ・コーポラティズムの誕生

戦後のヨーロッパでは、特に北欧諸国において、社会的な利益集団の集権的なシステムが注目され、シュミッターらによって「ネオ・コーポラティズム」という概念が提唱されました。この時期、経済政策は高い経済パフォーマンスを誇り、賃金政策やマクロ経済戦略の分析にも用いられるようになりました。

コーポラティズムと福祉国家

集権化された労働組合が賃上げ要求を抑制することで、経営者団体が社会保障政策を受け入れるケースが見られます。このように、コーポラティズムは福祉国家とも深く関わりがあり、普遍主義的な社会保障政策を実施するためには完全雇用の維持が必要とされます。労働組合が強固であるほど、労働者の移動や産業の再編に対して協力的になる傾向があります。

時代の変化とコーポラティズムの衰退

しかし、1980年代以降のグローバル化の影響により、コーポラティズム体制には変化の兆しが見え始めました。製造業からサービス業への構造的変化や、資本の国際移動の自由化が進み、労働組合の発言力が低下しました。特にスウェーデンなどの国々では、労働組合の退潮や政策の分権化が進んでおり、コーポラティズムは衰退しているとの指摘がされているのです。

コーポラティズムは、組織的かつ共通の目的に向かって利害を調整する政治システムとして、多様な形態を持ちながらも、常に時代背景とともに変化し続けています。

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