ゴズフレズ (デンマーク王)

ゴズフレズ王の生涯：デンマークとフランク王国の狭間で

ゴズフレズ（生年不詳 - 810年）は、9世紀初頭のデンマーク王として、その治世はフランク王国との緊張関係の中で特徴づけられます。彼の名前は、Godfred, Gudfred, Göttrick, Gøtrik, Gudrød, Godofredusなど、複数の綴りで記録されており、当時の言語や記録方法の多様性を示唆しています。

フランク王国との対立

ゴズフレズの治世は、フランク王国との対立が大きな軸となります。彼の兄ハルフダンは、ゴズフレズへの納税を拒否し、フランク王カール大帝に忠誠を誓いました。この背景には、フランク王国の勢力拡大があります。カール大帝は、ザクセン征服の一環として、ホルシュタイン東部からサクソン人を強制移住させ、同盟関係にあったオボトリート族に与えました。これにより、フランク王国の勢力はアイダー川まで拡大し、デンマークとの国境を接するようになりました。

ゴズフレズは、フランク王国の勢力拡大を自らの領土への脅威とみなし、対抗措置を取ります。808年には、オボトリート族の商業地レリクを襲撃し、首長を殺害。商人たちをヘーゼビューに移住させ、自身の支配下におきました。この行為は、フランク王国に対する明確な敵対行動と言えるでしょう。

翌年、フランク王国側とゴズフレズの間で会談が行われましたが、詳細は不明です。しかし、カール大帝がエルベ川対岸に拠点を設けたことから、両者の緊張関係は継続していたことが伺えます。

フリースラント侵攻と最期

810年、ゴズフレズは200隻の船を率いてフリースラントの海岸に上陸し、略奪を行いました。彼は商人や農民に銀の支払いを要求し、北フリースラントをデーン人の領土と宣言しました。この侵攻は、フランク王国に対する明らかな挑発行為であり、彼の強硬な姿勢を示すものです。

しかし、その年の夏、ゴズフレズは傭兵の一人によって暗殺されました。ノトケル・バルブルスによれば、彼を殺害した護衛は、彼の息子たちだったとされています。これは、王位継承を巡る内部抗争があった可能性を示唆しています。

ゴズフレズの死後、フランク王国は、王国の北の海岸線を守るため、ヴァイキングの首長たちに貢納を始めました。これは、ヴァイキングの侵攻を防ぐための方策であったと考えられます。

伝説の中のゴズフレズ

ゴズフレズは、古フランス語の騎士道物語に、オジェ・ル・ダノワ（ホルガー・ダンスク）の父ジョフロワとして登場します。この伝説は、彼が後世に英雄的な人物として語り継がれていたことを示しています。オルジェ・ル・ダノワは788年にカール大帝の宮廷に仕えたとされており、ゴズフレズの時代より少し前になります。

まとめ

ゴズフレズは、フランク王国の勢力拡大という激動の時代に生きたデンマーク王です。彼はフランク王国に警戒し、対立を深めましたが、その治世は、商業拠点の破壊やフリースラントへの侵攻など、波乱に満ちたものでした。彼の死後、フランク王国はヴァイキングへの貢納を開始するなど、その影響は長く続きました。また、伝説の中では、英雄的な人物として語り継がれています。

参考文献

ヘリエ・サイゼリン・ヤコブセン著『デンマークの歴史』高藤直樹訳、村井誠人監修、ビネパル出版、1995年。
ルードルフ・プェルトナー著『ヴァイキング・サガ』木村寿夫訳、法政大学出版局、1997年。

もう一度検索