ゴットフリード・ワグネル

ゴットフリード・ワグネル：日本の近代化に貢献したドイツ人技術者

ゴットフリード・ワグネル（Gottfried Wagener, 1831年7月5日 - 1892年11月8日）は、明治時代に日本政府に雇用され、工学教育と窯業の発展に多大な貢献をしたドイツ人技術者です。彼の足跡は、日本の近代化に深く刻まれています。

生涯

訪日以前

1831年、ワグネルはハノーファー王国（現ドイツ）で生まれました。幼少期から学業優秀でしたが、内気な性格だったと伝えられています。工芸学校卒業後、鉄道会社勤務を経て、ゲッティンゲン大学で数学・自然科学を学び、教員資格を取得。その後、ベルリン大学でも学び、数理物理学の博士号を取得しました。

1852年、政治的な理由でパリへ移住。ドイツ語教師や翻訳官として働きながら、フランス語、イタリア語、デンマーク語などを習得しました。1857年にリウマチを発症し、生涯の持病となります。その後、スイスで工業学校教師を務め、建設事業に携わるも失敗。療養後、パリで化学工場を始めますが、これも成功しませんでした。

訪日

1868年、ワグネルはアメリカ企業のラッセル商会に招聘され、長崎に到着しました。石鹸工場設立に携わりますが、事業は軌道に乗らずに終わります。その後、佐賀藩に雇われ、有田で窯業の技術指導を行います。

有田での貢献

石灰を用いた経済的な釉薬の開発
安価なコバルト顔料の使用
* 石炭窯の築造実験

これらの指導を通して、伊万里焼（有田焼）の近代化に貢献しました。1870年からは東京大学でドイツ語教師を務め、その後、東京医学校で数学、博物学、物理学、化学を教えました。

ウィーン万国博覧会

1873年、ウィーン万国博覧会に事務局御用掛として参加。陶磁器などの出品物の選定や技術指導、目録作成を担当しました。ヨーロッパの嗜好や化学の知識を生かし、日本の工芸品を世界に紹介する役割を果たしました。

ウィーン万国博覧会以降

博覧会後、ヨーロッパで学ぶ伝習生の斡旋や博物館の準備調査、機器購入を担当。帰国後、東京博物館創立を建議し、開成学校（後の東京大学）に製作学教場を設け、教師となりました。その後も、フィラデルフィア万国博覧会関連業務や勧業寮の仕事に携わりました。

京都での活動

1878年、京都府に雇われ、京都舎密局で化学工芸の指導や医学校での理化学の講義を行いました。ここでは、永樂和全の協力を得て陶磁器、七宝、ガラスの製法などを指導しました。

東京職工学校

1881年、東京大学理学部の教師となり、1884年からは東京職工学校（現・東京工業大学）で窯業学を教えました。1886年に陶器破璃工科が独立すると、その主任教授に就任し、後進の育成に尽力しました。また、新しい陶器の研究にも取り組み、吾妻焼、旭焼を開発しました。

死去とその後

1892年、ワグネルは病のため東京で亡くなりました。彼の遺体は青山霊園に埋葬され、墓碑は現在も残っています。京都市と東京工業大学には記念碑が建立され、その功績を称えています。

人材育成

ワグネルは多くの生徒を育成し、彼らは教育界や産業界で活躍しました。中川謙二郎、島津源蔵、植田豊橘、中沢岩太などがその代表です。ワグネルは、日本の近代化を担う人材育成に大きく貢献しました。

窯業との関わり

ワグネルは、化学の知識を基に日本の窯業に深く関わりました。有田での指導、京都舎密局での指導、旭焼の開発などを通して、日本の陶磁器の近代化に貢献しました。また、七宝の透明釉の開発は、日本の七宝の美しさを飛躍的に高めました。

人物像

ワグネルは、記憶力・理解力に優れ、生涯学究心を失わなかったと伝えられています。寡黙で謙譲な性格であり、自らの成果を誇ることはありませんでした。音楽を愛し、語学にも堪能でしたが、日本語は日常会話程度でした。

ゴットフリード・ワグネルは、日本の近代化に貢献した偉大な技術者であり、教育者でした。彼の功績は、後世に語り継がれることでしょう。

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