ゴニオフォリス

ゴニオフォリス（Goniopholis）

ゴニオフォリスは、後期ジュラ紀から前期白亜紀にかけてヨーロッパの各地に生息していた新鰐類の一属であり、全長約2 - 3メートルの大きさを持っていました。外見は現生のワニに似ていますが、いくつかの特徴的な相違点があります。具体的には、二次口蓋が未発達であり、また鱗板骨の列数が少ないことが挙げられます。これらの特徴は、ゴニオフォリスが当時の環境でどのように生息していたかを示唆しています。

発見と種

ゴニオフォリスのタイプ種である G. crassidens はイングランドのベリアシアン階から発見されており、別の種である G. simus はドイツのノルトライン＝ヴェストファーレン州で知られています。これらの種はもしかすると同一の種である可能性もあります。また、イングランドのベリアシアン階からは G. kiplingi、ポルトガルのキンメリッジアン階からは G. baryglyphaeus など他の種も報告されています。特に、G. kiplingi という名前は著名な作家、ラドヤード・キップリングにちなんで名付けられました。

さらに、ポルトガルの古いジュラ系からはゴニオフォリスのものとされる卵化石も発見されています。このように、ゴニオフォリス属には多くの種が存在していたことが分かります。

分類の変更

過去にはブラジルから発見されたいくつかの種もゴニオフォリス属に分類されていましたが、その後の研究によって再分類が行われました。ブラジルの下部白亜系から見つかった G. hartti はサルコスクスに、G. paulistanus はイタスクス科のロクソチャンプサに再分類されました。

また、北アメリカ大陸から見つかった G. lucasii と G. kirtlandicus は、アンフィコティルス属とデナジノスクス属として独立した種とされています。さらに、モリソン累層から知られる G. felix、G. gilmorei、G. stovalli もアンフィコティルス属に分類されることがあるとされており、一定の近縁性が指摘されています。

特徴

ゴニオフォリスの特徴として、その体長は2 - 3メートルで、現生のワニと同様に横に広がった四肢や扁平な体型を持っています。ただし、正鰐類に近い新鰐類であるにもかかわらず、ゴニオフォリスでは鱗板骨が2列であり、現生の正鰐類よりも少ないことが分かっています。鱗板骨の列数やその大きさは、椎骨との関係で安定性に寄与するため、ゴニオフォリスは現生の種と比べて動きの柔軟性が低かったと考えられます。

また、ゴニオフォリスは二次口蓋が発達しておらず、口腔と鼻腔の分離も進んでいないため、呼吸効率に劣っていたと推測されます。この点からも、ゴニオフォリスの生態や生息環境に関する理解が深まります。

生態

ゴニオフォリスが生存していた後期ジュラ紀の期間には、ローレンシア大陸とゴンドワナ大陸が存在し、両大陸の間にはテチス海が広がっていました。当時の環境は主に淡水性のラグーンで、後期白亜紀には気温上昇に伴って海進が起こり、汽水域に変化していったことが想定されます。これらの環境に適応して、ゴニオフォリスは生息していたと考えられています。

ゴニオフォリスは主に魚類を捕食していたとされますが、恐竜の化石と共に見つかることがあるため、恐竜の死骸を漁ることもあったのではないかと考えられています。新鰐類の中でも特に正鰐類に近い存在であり、当時の水辺の捕食動物として重要な地位を占めていたことが示されています。

展示

日本では、群馬県立自然史博物館が成安造形大学と協力して、ゴニオフォリスの全身復元骨格と生態画を制作しました。2015年には「恐竜時代の海の支配者」という企画展で展示され、多くの来場者にその姿を披露しました。ゴニオフォリスの研究は、古生物学における貴重な情報源として今後も注目され続けることでしょう。

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