ゴモルテガ科

ゴモルテガ科の紹介

ゴモルテガ科（Gomortegaceae）は、クスノキ目に属する植物の科で、唯一の属であるゴモルテガ属には一種のみが含まれています。それはゴモルテガ・ケウレ（Gomortega keule）で、この種はチリのほんの一部の地域にのみ自生しています。特に、この常緑高木は、太平洋岸の湿った渓谷の森林に見られ、高さは15メートルほどに達します。

特徴

ゴモルテガ・ケウレは、精油を含むことが特徴で、葉を揉むと独特の芳香を発します。葉は対生で、革質の単葉で托葉はありません。葉身は狭卵形で、全縁の美しい形状をしています。気孔は平行型で、葉脈は羽状に分布しています。これにより、葉は多層の表皮構造を持ち、光合成に最適な条件を提供しています。

花は直径4-5ミリメートルの両性で、白色の放射相称な形状をしています。花序は腋生または頂生であり、少数の小さな苞によって囲まれています。花被片は緑色で、萼片と花弁の区別がありません。雄しべは7-13本あり、花糸の基部には付属体が存在します。雌しべは合生心皮から成り立ち、子房下位の構造が特徴です。果実は黄色い核果で、一般的に大きな種子を一つ含んでいます。

分布と生態

ゴモルテガ・ケウレの生息地は、チリの太平洋側中央部で、標高10から700メートルの限られた範囲に分布しています。この植物は、湿った渓谷の森林に見られ、他の種（例えば、ナンキョクブナなど）と共生しています。特に、花は雌性先熟で、蜜腺から分泌される蜜は昆虫を引き寄せ、特にハナアブによって送粉されることが多いです。

保全状況

この植物の生息地は、人間活動や自然環境の変化により深刻な影響を受けています。生息地の破壊により分布域は分断され、全体の分布面積はわずか300平方キロメートルに過ぎません。現在、推定で1,000本程度の成木が残っているとされ、これらの大半は年齢の低い小さな集団です。発芽率も低く、周辺のマツやユーカリの侵入によってさらに影響を受けています。1995年には天然記念物に指定され、国立公園の一部として保護されていますが、保護対象となっている地域は限られています。また、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、絶滅危惧種に指定されています。

人間との関わり

ゴモルテガ・ケウレの果実は、地域でジャムの原料として利用されることがあります。過去には、その耐久性のある木材が建築資材や燃料としても用いられていました。この植物は、地域の生態系において重要な存在であり、その保護が求められています。

分類

ゴモルテガ属は18世紀に最初に記載され、19世紀には独立したゴモルテガ科として認識されるようになりました。クスノキ目の中で、ゴモルテガ科はアテロスペルマ科と密接に関連していると考えられており、この2つの科はシパルナ科とともに系統群を形成しています。ゴモルテガ科は、古代ゴンドワナ大陸に存在していた植物群の一部であり、その希少性と特異性から生物多様性の保全において重要な役割を果たしています。

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