ゴラン (装輪装甲車)

ゴラン (歩兵機動車)

ゴランは、2000年代にイスラエルのラファエル社とアメリカ合衆国のプロテクテッド・ヴィークルズ社によって共同開発された歩兵機動車です。アメリカ海兵隊が主導したMRAP（耐地雷・伏撃防護）プログラムに参加し、その性能が評価され60両が発注されました。

概要

ラファエル社は元々、低強度紛争向けにゼーヴという装輪装甲車を開発していました。しかし、アメリカ海兵隊のMRAPプログラムの要求仕様に対応するため、より高い防御力を持つ装輪装甲車の開発に着手しました。それがゴランです。

ラファエル社によると、ゴランは地雷、IED（即席爆発装置）、RPG（ロケット推進擲弾）、小火器、爆発物、砲弾の破片などからの防護に重点を置いて設計されています。車体重量の約50％が乗員の防護に費やされており、生存性が非常に高い車両と言えます。

車体下部はV字型になっており、爆発時のエネルギーを拡散させる構造となっています。車内の床はフローティング構造で、爆発の衝撃を直接受けにくい設計です。さらに、車内壁面には飛散防止内張り（スポールライナー）が装備されており、爆発時に発生する破片から乗員を保護します。

ゴランは、任務に応じてNBC（核・生物・化学）防護装置や、M2ブラッドレー歩兵戦闘車に装着されるものと同タイプの爆発反応装甲（ERA）を装備することも可能です。

防御力

ゴランの装甲防御は3段階に設定されており、状況に応じて変更できます。

レベル1（基本）: 7.62mm弾に対する防御力
レベル2: 増加装甲タイル装着により、14.5mm弾に対する防御力
レベル3: ERA装備により、対戦車ロケット弾に対する防御力

防御レベルの変更は、フィールド上で行うことができます。また、どの防御レベルに設定しても車体の外観が変わらないという特徴があります。これにより、敵はゴランが脆弱かどうかを見分けることが難しくなります。

武装

ゴランには、ラファエル製のミニ・サムソンRCWS（遠隔操作式銃塔）を搭載可能です。必要に応じて、5.56mm、7.62mm、12.7mm機関銃、あるいは対戦車ミサイルなどを装備できます。これにより、様々な脅威に対応できます。

走行性能

エンジンには、出力315hpのカミンズ製ディーゼルエンジンを搭載しています。サスペンションや変速機など、走行に関する部品はアメリカ製です。また、タイヤ空気圧中央制御システム (CTIS) とランフラットタイヤを装備しており、悪路走破性や被弾時の走行能力を高めています。

運用

ゴランは、イスラエル国防軍とアメリカ海兵隊に提案されました。2006年9月には、アメリカ海兵隊によるMRAPプログラムの試験が開始され、2007年1月にMRAPプログラム選定評価に合格しました。同年2月には、アメリカ海兵隊からMRAPカテゴリーIIの車両として60両が発注されました。

その後、イスラエルとアメリカの間で大量導入についての協議が行われましたが、結果として実現しませんでした。イラクでの作戦縮小に伴い、アメリカ海兵隊におけるゴランの運用も停止されたと考えられています。

関連項目

歩兵機動車
MRAP（耐地雷・伏撃防護車）

外部リンク

tanknutdave.com The Golan Category 2 MRAP 動画

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