ゴードン・ヒラバヤシ

ゴードン・キヨシ・ヒラバヤシの生涯と業績

ゴードン・キヨシ・ヒラバヤシ（平林 潔）は、1918年4月23日にワシントン州シアトルで誕生しました。彼の両親は日本から渡米した移民で、父の平林俊吾は長野県出身であり、長い間青果店を経営していました。ヒラバヤシ一家は、信仰心の強い無教会主義のキリスト教徒として育ちました。

オーバーン高校を卒業後、ヒラバヤシはワシントン大学に進学し、ここで社会学の学位を取得します。大学生活ではYMCAに参加し、宗教的な平和主義に目覚めるようになります。これらの経験は、後の人生に大きな影響を与えました。

第二次世界大戦と強制収容への抵抗

第二次世界大戦が勃発する中、アメリカでは日系人への強制収容が進行していました。当初、ヒラバヤシはこの措置を受け入れることを考えていましたが、次第にその倫理性を疑問視するようになります。彼はミノル・ヤスイに次いで、この不当な扱いに公然と反対する人物となります。

1942年5月16日、ヒラバヤシは夜間外出禁止令に違反したとしてFBIに呼び出されました。そこで、彼は日系人への強制収容を「人間の尊厳を侵し、生きる権利を否定するもの」と批判し、合衆国の民主主義の原則を守ることが自分の義務であると述べました。そして、命令に従わないことを宣言し、書状を提出しました。

その結果、同年10月20日に懲役90日を宣告されますが、彼はアメリカ自由人権協会の支援を受けて最高裁判所に上訴します。しかし1943年6月、裁判所はヒラバヤシを有罪とし、彼を収監するための手続きは何も行われませんでした。結局、ヒラバヤシはヒッチハイクでアリゾナの刑務所に向かい、当局が紛失した書類の問題に巻き込まれることになります。

奇妙な状況の中、彼は一時帰宅を提案されましたが、それが疑念を呼ぶことを恐れ、外出を許可されることになりました。このような事態は、彼の信念に対する試練でもありました。

戦後の学問と人権活動

戦後、ヒラバヤシはワシントン大学で社会学の博士号を取得し、レバノンのベイルートやエジプトのカイロにある大学で教える機会を持ちます。1959年にはカナダのアルバータ大学に任職し、1970年から1983年まで同大学の人文学部社会学科の学科長を務めました。彼の研究分野は、ドゥホボル派のロシア系移民やエジプトの村社会、さらにはアジア系アメリカ人に関する問題に焦点を当てていました。

1987年、ヒラバヤシの裁判に不正があったことを示す重要な証拠が発見され、連邦裁判所で彼の有罪判決が覆されました。この再審は、彼の司法への信念が試された瞬間であり、彼の人権のための闘いを裏付けるものでした。

引退後も、彼は人権擁護の活動を継続し、さまざまな社会問題に積極的に関与していました。2012年1月2日、カナダのアルバータ州エドモントンで93歳で逝去しました。

そして、同年の5月29日には、日系人の強制収容への抗議活動を称えられ、アメリカ合衆国の大統領自由勲章を受賞しました。ヒラバヤシの生涯は、個人の信念が歴史を動かす力を持つことを示す象徴的な例となっています。

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