サウジアラビアにおける信教の自由

サウジアラビアにおける信教の自由

サウジアラビアにおける信教の自由は、イスラム教ワッハーブ派が絶対的な優位を持つ宗教的不平等のもと、様々な迫害が存在するという問題を抱えています。

背景

サウジアラビアは建国以来、イスラーム原理主義を掲げるワッハーブ派を国教としています。メッカとメディナという二つの聖地を国内に抱えるという特別な事情も重なり、イスラーム圏の中でも特に信教の自由が厳しく制限されている国の一つとなっています。

学校教育においては、イスラム教以外の宗教は全て誤りであり、地獄に落ちると教えられています。また、シーア派など他の宗派に対しても否定的な内容が教えられているとされています。これらの教育が、宗教的寛容さを育む上で大きな障壁となっていることは否めません。

実情

サウジアラビアの国法では、ワッハーブ派以外の宗教は原則として禁止されています。そのため、サウジアラビア国民は建前上、ワッハーブ派のムスリムであるとされ、サウジアラビア国籍の取得にはワッハーブ派への改宗が義務付けられています。

しかし、実際には東部地域にはシーア派住民が居住しており、彼らの人権を認めるべきだという声が高まっています。また、キリスト教徒はさらに厳しい抑圧下に置かれているとされ、キリスト教の聖職者やサウジアラビア人改宗者は投獄や公開斬首刑に処される事例も報告されています。このような状況は、国際的な人権団体からも強い非難を浴びています。

1993年3月1日の統治基本法公布以降、ズィンミー（異教徒）の存在が公式に認められるようになり、シーア派の指導者同士では和解もみられました。これにより、法制度上は他の宗教を信仰すること自体が犯罪行為とはされなくなりましたが、ワッハーブ派以外の信者が社会的に低い地位として扱われる差別的な社会システムは依然として存在しています。

公式に認められている宗教は、イスラム教以外ではキリスト教、ヒンドゥー教、ユダヤ教のみです。例外的に、仏教はヒンドゥー教の一派であるゴーダマ派として容認されています。しかし、ディーヤ（血の代償）における価値算定基準では、キリスト教徒はムスリムの半分、ヒンドゥー教徒とユダヤ教徒は15分の1とされており、宗教間の不平等が依然として存在することがわかります。

関連項目

イスラーム教徒による宗教的迫害
アラブ イスラーム学院
* 中田考

サウジアラビアにおける信教の自由は、依然として多くの課題を抱えています。今後の動向が注目されます。

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