サマラトゥンガ王

サマラトゥンガ王とは

サマラトゥンガ王（生年不詳 - 832年）は、8世紀から9世紀にかけてインドネシアの中部ジャワに栄えたシャイレーンドラ朝の王です。彼は大乗仏教を篤く信仰し、その治世は仏教文化の発展に大きく貢献しました。

シャイレーンドラ朝と古マタラム王国

当時、中部ジャワにはシャイレーンドラ朝と、古マタラム王国のサンジャヤ朝という二つの勢力がありました。サンジャヤ朝は、シャイレーンドラ朝に服属し、その証として、従来のシヴァ信仰を維持しながらも、ボロブドゥール寺院への寄進を行っていました。このことから、両王朝の関係は必ずしも敵対的ではなく、友好的な側面もあったと考えられます。

サマラトゥンガ王の娘であるプラモーダヴァルダニー王女は、サンジャヤ朝の王子ラカイ・ピカタンと婚姻関係を結んでいます。この婚姻は、両王朝間の関係をさらに深める役割を果たしたと言えるでしょう。

ボロブドゥール寺院の建設

サマラトゥンガ王は、在位中の824年にボロブドゥール寺院の工事を再開しました。この工事は、彼の死後の833年まで続けられました。ボロブドゥール寺院は、世界最大級の仏教寺院として知られ、サマラトゥンガ王の仏教への深い信仰と、その治世における文化的な繁栄を象徴する存在です。

王の死とその後

サマラトゥンガ王が832年に亡くなると、後継者のバーラプトラはまだ幼かったため、姉であるプラモーダヴァルダニーが摂政となりました。しかし、その後、実権はプラモーダヴァルダニーの夫であるラカイ・ピカタンに移り、彼はシヴァ信仰を奉じるヒンドゥー教勢力として台頭します。そして、2人はチャンディ・ロロ・ジョングランをはじめとするプランバナン寺院群を建造し、中部ジャワは再びヒンドゥー教勢力に支配されることになり、大乗仏教は衰退していきました。

シャイレーンドラ朝の終焉

832年以降、シャイレーンドラ朝は歴史の表舞台から姿を消し、碑文や史料にもほとんど現れなくなります。ボロブドゥール寺院の改修も833年を最後に終わっています。シャイレーンドラ王家のその後の消息を伝える資料は少ないですが、後継者争いに敗れた最後の王子バーラプトラは、856年にスマトラ島のシュリーヴィジャヤ王国へ逃れ、その王女と結婚したという記録が残っています。

まとめ

サマラトゥンガ王は、シャイレーンドラ朝の最盛期を築いた王であり、ボロブドゥール寺院の建設を通じて、仏教文化の発展に大きく貢献しました。彼の死後、中部ジャワはヒンドゥー教勢力に支配されることとなり、シャイレーンドラ朝は衰退しましたが、彼の業績は、今もなおボロブドゥール寺院を通して語り継がれています。

関連事項

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